今回のテーマは「台湾のハラール市場」です。

先日開催された「台湾ハラール市場視察ツアー(台湾貿易センター主催)」

に招待された際の模様をお届けします。

盛り上がる台湾のハラール市場、きっかけは「Southbound Policy」

「新南向政策(Southbound policy)」という政策をご存知でしょうか。

台湾の現総統である蔡英文(ツァイ・インウェン)氏による政策で、

前政権での中国一辺倒だった政策とは打って変わり、

東南アジアや南アジアとの関係強化(経済貿易協力、人材交流など)を進める政策です。

蔡(ツァイ)総統は、新南向政策の方針として、

「ムスリムは台湾にとって重要なパートナーであり、快適な環境を提供するために、 礼拝場所やハラール認証の整備を行っていかなくてはならない」と言及しています。

こうした背景から、TAITRA(日本でいうJETROに相等)は

ハラールレストランの認証取得サポートを開始するなど、

台湾では今まさにハラールにおける取組みが大きく進展しています。

そこで今回は、次の6つの視点で台湾ハラールの現場に迫ります。

①観光アクティビティー

②レストラン

③ホテル

④モスク

⑤プロダクト

⑥公的機関

【①観光アクティビティー】

台湾のお土産といえば「パイナップルケーキ」ですよね。

台湾にはパイナップルケーキ作り体験を

ムスリム向けに展開している企業があります。

・お祈りスペース完備

・英語でのレクチャー

・手作りスペースを一部ムスリム専用に確保 

など丁寧なムスリム対応が人気を呼び、

参加者全体の1/3をムスリムが占める時期もあるそうです。

ちなみに値段は250台湾ドル(=日本円で900円)と

お求めやすいのも人気の理由の一つ。

自分で作ったものをお土産として持ち帰るという体験型ツーリズムは、

一緒にツアーを回った東南アジアのムスリム客にも好評でした。

【②レストラン】

台湾には現在120を超えるハラールレストランがありますが、

中でもムスリムに人気だというのが「牛肉麺」と「アイスモンスター」です。

どちらも台湾の代表的なコンテンツです。

先にご紹介したパイナップルケーキしかり、

牛肉麺、アイスモンスターしかり、

「自国の強み」と「ムスリムのニーズ」をしっかりと把握し、

ハラール対応をしているのがよく分かりました。

【③ホテル】

今回宿泊したのは台北駅近の「Palais de Chine Hotel」。

当ホテルはムスリムフレンドリーホテルとして知られており、

宿泊時にはキブラマーク・コーラン・礼拝マットを提供して頂きました。

ビュッフェ形式の朝ごはんには、ハラールメニューが準備されていましたが、

ベーコン・ハムの真隣に配列されていて、

一緒に回ったムスリム客も苦笑い。(この点は配慮が必要ですね)

しかし、 各料理のネームプレートに「ポークマーク」や

「素食(ベジタリアン)マーク」が印字されているなど

分かりやすい表記はムスリム客にも好評でした。

ちなみに台湾のムスリムフレンドリーホテルは現在98箇所。

今後更なる増加が予想されます。

【④モスク】

58年の歴史があるという台北モスク。
台湾一番の大きさを誇り、20万〜30万人いるといわれる在住ムスリムのハブになっています。

高齢化に伴い介護の担い手としてインドネシアから労働者が急増している現状を受け、
モスクでは仲介業者や受け入れ家族向けにイスラーム講座を開くなど、
モスクが中心となって相互理解を図る場を設けているようです。

【⑤プロダクト】

台湾国内のハラール認証取得企業は800社を上回るそうです。
フード台北でもハラール専用のブースが設置されるなど、
国として注力している意向が伺えました。
タピオカ・ミルクティー味のポップコーン・パイナップルケーキ等、
台湾を代表するプロダクトがハラール対応をしており、
海外バイヤーの注目を集めていました。

【⑥公的機関】

台湾は、外務省・観光庁をはじめてとする公的機関が、
国を挙げてハラール市場に注力しているのが分かりました。

中でもTAITRA代表者のコメントが印象的でした。

「これまでムスリム諸国を意識してこなかったが、
台湾はSouthbound policyを受けてムスリムへの認識がまるで変わった。
同じ非ムスリム諸国として、日本とも連携を深めていきたい。
近いうちに日本と台湾とでマッチングの機会を作りたい」

と話していました。

今回の台湾視察の重要なポイントは下記の3つです。

①台湾は国が相当な後押しをしている
②ベジタリアンやハラール等様々な食の禁忌が共存している
③国の強みを十分に活かしている

同じ非ムスリム諸国として、
日本が台湾から学ぶべきことは多いのではないでしょうか。