日々ニーズが多様化する飲食・ホテル現場

インバウンドの増加に伴い、飲食店やホテルでは「ヴィーガン」「ハラール」「グルテンフリー」といった食の多様性への対応を求められる機会が増えています。

しかし、

「ヴィーガンとハラールは何が違うのか?」

「グルテンフリーならヴィーガンも食べられるのか?」

「結局、何を使わなければいいのか?」

など、現場では違いが分かりにくいという声も少なくありません。

観光庁も、多様な宗教的・文化的習慣を持つ訪日外国人旅行者の受入環境整備を進めており、2026年3月更新の案内では、ベジタリアン・ヴィーガンとムスリム旅行者について、共通部分を中心にまとめた「おもてなしガイド」を公開しています。

今回は、飲食店やホテルが知っておきたい「ヴィーガン」「ハラール」「グルテンフリー」の違いを整理します。

ヴィーガン・ハラール・グルテンフリーの違い

まず重要なのは、3つは「食べられないもの」が違うだけではなく、そもそもの考え方が異なるということです。

ヴィーガン ハラール グルテンフリー
基本的な考え方 動物由来の食品を避ける イスラム教の戒律に基づく グルテンを避ける
× 屠畜次第で○
魚介類 × 基本的に○※
×
乳製品 ×
豚肉 × ×
アルコール飲料 × 種類による
アルコール調味料 ×
小麦 ×
野菜

※ハラールについては宗派や個人によって判断が異なる場合があります。

つまり、ヴィーガン=動物由来、ハラール=イスラム教の戒律、グルテンフリー=グルテンという軸で考えると理解しやすくなります。

ヴィーガンとは?

ヴィーガンは、肉や魚だけでなく、卵や乳製品などの動物由来食品も避ける食生活です。

飲食店で特に注意したいのが、料理そのものには肉や魚が見えなくても、だしや調味料に動物由来原材料が使用されているケースです。

例えば、

  • かつおだし
  • 煮干しだし
  • チキンエキス
  • ポークエキス
  • バター
  • 牛乳

などが使用されていれば、一般的にはヴィーガン料理とはいえません。

一方で、米、野菜、豆類、海藻、きのこ類など、植物由来の食材を中心に料理を組み立てることができます。

ハラールとは?

ハラール(Halal)は、アラビア語で「許されたもの」を意味し、食に限らずイスラム教の戒律において認められているものを指します。

飲食店で特に重要になるのが、豚由来原材料とアルコール、そして肉類です。

豚肉そのものだけではなく、

  • ポークエキス
  • 豚脂・ラード
  • 豚由来ゼラチン

などについても確認が必要です。

また、日本料理では料理酒やみりんなど、アルコールを含む調味料が使用されることがあります。

肉類についても「牛肉だから大丈夫」「鶏肉だから大丈夫」というわけではなく、ハラールの考え方に沿った処理がされているかなどを確認する必要があります。

なお、実際の判断や許容範囲については宗派や個人による違いがあります。そのため、飲食店側が一方的に「食べられる」と判断するのではなく、使用している原材料や調理環境について正確な情報を伝え、お客様自身が判断できるようにすることも重要です。

観光庁もムスリムを含む多様な食習慣を持つ外国人旅行者について、飲食店・宿泊施設などの現場で具体的に取り組める受入環境整備を推進しています。

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グルテンフリーとは?

グルテンフリーとは、小麦などに含まれるグルテンを避ける食事です。

代表的に注意したいのは、

  • 小麦
  • 大麦
  • ライ麦

などです。

そのため、パン、パスタ、うどん、一般的な小麦粉を使用した天ぷらなどは、そのままではグルテンフリーにはなりません。

一方で、

  • 米粉
  • 野菜

など、それ自体にはグルテンを含まない食材も多くあります。

ここで飲食店が特に注意したいのが、「グルテンフリー」と「小麦アレルギー」は同じではないということです。

消費者庁も、欧米等における「グルテンフリー表示」と日本の「アレルギー表示」は基準が異なると明示しています。また、欧米等ではグルテン濃度20ppm以下という基準が用いられる一方、日本の小麦アレルギー表示は別の考え方に基づいています。

小麦アレルギーは健康被害につながる可能性があるため、安易に「グルテンフリーだから小麦アレルギーでも大丈夫」と案内してはいけません。消費者庁は外食・中食事業者向けにも食物アレルギーに関する情報提供を行っています。

3つを別々に考えすぎないことが重要

ここまで見ると、「全部に対応するのは大変そう」と思うかもしれません。

しかし、実際の飲食店ではヴィーガン、ハラール、グルテンフリーを完全に別々のメニューとして考える必要はありません。

例えば、

米+野菜+豆腐+きのこ+昆布

などをベースに料理を設計すれば、複数の食ニーズに対応しやすくなります。

そこから一般のお客様には肉や魚を追加するなど、共通する部分からメニューを組み立てれば、メニュー数や在庫、現場のオペレーションを必要以上に増やさずに済みます。

重要なのは、「食べられないものの違い」から考えるのではなく、「みんなが共通して食べられるもの」から考えることです。

「対応できます」よりも「何を使っているか」を伝える

そして、もう一つ重要なのが情報提供です。

「ハラール対応です」

「ヴィーガン対応です」

「グルテンフリーです」

と表示するだけではなく、

何を使用していて、何を使用していないのか。

さらに必要に応じて、調理器具やフライヤーなどを他の料理と共有しているのか。こうした具体的な情報を伝えることで、お客様自身が判断しやすくなります。特に食物アレルギーについては、微量のアレルゲンでも症状につながる場合があります。消費者庁も、原材料や製造・調理工程を正しく理解し、誤解を招く表示を避けることの重要性を示しています。

食の多様性対応は「特別食」ではなくなっていく

ヴィーガン、ハラール、グルテンフリー。

それぞれ背景も避けるものも異なります。しかし飲食店側から見れば、すべてに専用メニューを作ることだけが対応方法ではありません。

共通して食べられる料理を増やし、使用原材料を把握し、その情報を正確に伝える。

この基本を押さえるだけでも、受け入れられるお客様の幅は大きく広がります。観光庁も現在、ベジタリアン・ヴィーガンとムスリムについて共通部分を中心としたガイドを作成し、飲食店や宿泊施設が「まず何をすればいいのか」を理解できる受入環境整備を進めています。

「ヴィーガンだから別メニュー」

「ムスリムだから別メニュー」

「グルテンフリーだから別メニュー」

と考えるのではなく、できるだけ多くのお客様が一緒に食べられる料理をつくるという視点がますます重要になっていくことでしょう。