台湾・インド・ムスリム市場が大きく成長
日本政府観光局(JNTO)が発表した2026年1月から7月までの訪日外客数は、前年同期比1.7%減の2,452万7,200人となりました。
全体の数字だけを見ると、インバウンド市場が減速しているように映るかもしれません。しかし、国・地域別に確認すると、違った動きが見えてきます。

JNTO統計より
上位20市場で減少したのは中国だけ
2026年1月から7月までの訪日外客数を人数順に見ると、1位は韓国の656万9,800人、2位は台湾の473万6,000人、3位は中国の248万6,500人となりました。上位20市場のうち、前年同期を下回ったのは中国だけです。
中国は前年同期比56.3%減となり、前年の569万3,104人から248万6,500人へ、約320万7,000人減少しました。
一方、訪日外客数全体の減少幅は約42万8,000人です。中国市場の大幅な減少を、ほかの市場の成長が約278万人分補った計算になります。
ムスリム・ベジタリアン対応が求められる市場が成長
注目したいのは、食習慣への配慮が求められる市場からの訪日客が、そろって増加していることです。
前年同期比で20%を超える伸びを記録した台湾とインドは、ベジタリアンの割合が比較的高い市場です。また、マレーシア、インドネシア、中東地域は、ムスリム旅行者の受入環境を整えるうえで重要な市場といえます。
もちろん、国籍だけで個人の宗教や食習慣を判断することはできません。しかし、グループ内に食事上の配慮を必要とする人が一人でもいれば、飲食店や宿泊施設には、グループ全体で安心して利用できる受入環境が求められます。
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食の多様性対応が必要な国・地域からのインバウンドが伸びている

観光庁のデータより
市場が変われば、飲食現場に必要な準備も変わる
訪日市場の構成が変われば、飲食店や宿泊施設で受ける質問も変わります。
- 豚肉や豚由来原材料を使用しているか
- アルコール、みりん、料理酒を使用しているか
- 肉、魚、卵、乳製品を使用しているか
- 玉ねぎやにんにくを除くことができるか
- 出汁や調味料に動物性原材料が含まれているか
- 調理器具や揚げ油を共用しているか
こうした質問に対応するために、すべての店舗が専用厨房や専用メニューを用意する必要はありません。
まずは既存メニューの原材料と調理工程を整理し、「対応できること」と「対応できないこと」を明確にすることが重要です。そのうえで、スタッフが共通の説明をできるようにし、判断できない場合には無理に「対応可能」と答えない体制を整える必要があります。
訪日客の総数ではなく「誰が増えているのか」を見る
2026年1月から7月までの訪日外客数は、全体では前年同期比1.7%減となりました。
しかし、その減少は中国市場の大幅な落ち込みによるところが大きく、ほかの主要市場の多くは成長しています。
特に、台湾、インド、マレーシア、インドネシア、中東地域など、ムスリム・ベジタリアン対応が求められる可能性の高い市場は、いずれも二桁の伸びを記録しました。
今後のインバウンド対応で見るべきなのは、訪日客の総数だけではありません。
誰が増えているのか。その人たちが日本で何に困るのか。
市場の変化を正しく捉え、原材料の整理、スタッフ教育、多言語での情報発信など、具体的な受入環境の改善につなげることが求められています。