老舗旅館が本気で取り組むヴィーガン対応

愛知県の最南端に位置する渥美半島は、三河湾と太平洋に囲まれた温暖な気候と豊かな自然条件に恵まれ、市町村別農業産出額でも全国上位に名を連ねる農業が盛んな地域です。

その渥美半島・田原市福江町にあるのが、昭和元年(1926年)創業の老舗温泉旅館「和味の宿 角上楼」。登録有形文化財にも指定されており、これまで世界中から多くの宿泊客を迎えてきました。

近年、同館が新たに取り組んでいるのが、ヴィーガン懐石料理の提供です。

角上楼のヴィーガン懐石

三代目主人が注目した「もう一つの宝」とは?

インバウンド需要の回復に伴い、旅館が直面したのがフードダイバーシティへの対応です。特に欧米や東アジアからのゲストを中心に、ヴィーガン(完全菜食主義)やベジタリアン、アレルギー対応へのニーズが急増してきたとのことです。

長らく魚料理を最大の特色としてきた角上楼にとって、動物性食材を一切使わない対応は容易ではなく、日本料理の基本である出汁に含まれる鰹節も使用できないことは、大きな課題となっていました。

そうした中で三代目主人・上村純士氏が目を向けたのが、地元の畑に広がる「もう一つの宝」でした。それは、ミネラル豊富な潮風と全国屈指の日照時間によって育まれた、渥美半島の野菜です。角上楼では、こうした地元野菜を主役に据え、日本料理の技法を応用しながらヴィーガン懐石を組み立てています。

出汁には鰹節ではなく、野菜の皮や芯、昆布を用い、味噌やヴィーガン対応の醤油などの発酵調味料を組み合わせることで、植物性のみでありながら奥行きのある味わいを実現しました。

献立の一例(季節によって異なります)

  • 先付
     豆乳と天然にがりのみで作る手作り豆腐

  • 前菜
     旬の野菜を中心に、それぞれの持ち味を生かした盛り合わせ

  • 強肴
     三河地方の八丁味噌を使った田楽

  • 焼物
     渥美大根を厚切りにし、素材の甘みを引き出したステーキ仕立て

  • 揚物
     地元野菜の天ぷらと、西尾産抹茶を使った抹茶塩

  • 食事
     野菜寿司と、土鍋で炊き上げた多古米

見た目や構成は従来の懐石料理を踏襲しながら、動物性食材を使わずに仕上げている点が特徴です。

日本人客にも広がる利用

このヴィーガン懐石は、海外からの旅行者だけでなく、日本人客にも利用されています。健康を意識する人や、連泊時に軽めの食事を希望する人など、利用の背景はさまざまです。

また、形が不揃いで市場に出にくい野菜を出汁やソースで最大限に活用することで、フードロス削減や地域農家の支援にもつながっています。

愛知県・渥美半島の未来と「野菜の旅」

角上楼の取り組みは、地域の食材の魅力を生かし、誰もが同じテーブルで美味しい料理を楽しめる場をつくる試みです。昭和レトロな風情の中で、土と太陽が育んだ野菜の力を味わう体験は、豪華な舟盛りとは異なる現代の贅沢と言えるでしょう。

次の旅行先は、風光明媚な渥美半島で、身体の芯から満たされる「野菜の旅」に出かけてみてはいかがでしょうか。

角上楼概要

店名 和味の宿 角上楼
住所 〒441-3617 愛知県田原市福江町下地38
電話番号 0531-32-1155
HP https://www.kakujoro.com/
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