“違い”を学び、“共に食べる”を育むために
グローバル化が進む昨今、食の多様性(フードダイバーシティ)は、単なる選択肢の一つではなく、共生社会の入り口として注目されています。そして、その第一歩は、子どもの頃からの教育にあります。アレルギー、宗教、文化──それぞれの「食べ方」「必要な配慮」を理解することは、多様な価値観と共に生きるための土台づくりに直結していくのではないでしょうか。

One Table Dayで食事をする園児
「食育」から「共食育」へ:ダイバーシティを教える意味
従来の学校教育における「食育」は、主に健康やマナーなどに重きが置かれてきました。しかし近年、教育現場のグローバル化によって、「なぜ隣の友達がその給食を食べられないのか?」を知るための教育機会が新たに発生しています。
今これら理由をしっかりと学ぶことで、子どもたちは単なる知識ではなく、共感・理解・配慮といった社会に出たときに役立つ実践的なコミュニケーション力を身につけることができます。
大人の意識変革も重要
同時に、大人の意識も時代の変化にあわせてアップデートしていくことが求められています。自身がそうした教育を受けてこなかったとしても、これからの時代を生き抜く子どもたちにとっては必要な学びであることを認識する必要があります。
国際交流、日本在住者増加、観光立国としての方向性を背景に、今後の日本はより多様な文化・宗教・価値観を内包する社会へと向かっていくことは間違いありません。
現場の取り組み事例
事例1:東京都品川区「食の国際理解」授業
小学校で毎年行われる特別授業では、ハラール・コーシャ・ヴィーガンなどの食文化を紹介し、実際に多様な食事体験を行うことで、それぞれを学んでいます。児童の感想には「自分と違っても、それぞれに理由がある」といった声も。
事例2:兵庫県・姫路もく保育園「One Table Day」
月に一度、アレルギーを含む様々な対応が必要な子どもたちも同じテーブルで同じメニューを食べられる日を設けています。これは「おいしいを共有する喜び」だけでなく、「なぜ食べられないのか」を学ぶ機会としても注目を集めています。
姫路市もく保育園「One Table Day」これまでの軌跡
マイナスの可能性も理解する
子どもたちは日常の中で“違い”に気づくことがありますが、その背景や理由を知らなければ、無意識のうちに差別や排除につながってしまう可能性もあります。
だからこそ、教育現場や大人たちが「これまでの教育」を見直し、「違いを学ぶこと」を通じて、子どもたち自身が考え、選び、受け入れる力を育む教育が求められています。
教育現場の課題と支援
【課題】
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情報不足(教育現場に多様な宗教、多様な文化への対応情報が不足している)
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給食現場の対応リソースが限定的
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児童・生徒に食の多様性について教える仕組みができていない
【支援策】
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教育現場が多様な食について学ぶ機会の導入
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限られたリソースのなかで対応できるノウハウ習得
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児童・生徒向けの体験型ワークショップ導入
未来の食卓をつくるのは、今の“教室”
地球規模で人・文化・食がつながる時代に、子どもたちが食を通じて多様性を学ぶことは、平和と共生の礎となります。将来、どこかの国で誰かと食卓を囲んだときに、「あ、知ってる。小学校でやった」と思い出せるような学びを届けること──それが今、私たち大人の責任です。