食べられない理由の背景を知ること第一歩
訪日外国人の数は年々増加し、2025年には過去最高を記録する勢いで推移しています。また、観光だけでなく、留学・就労・家族滞在などを目的に日本で暮らす外国人も増加傾向にあり、街中でもさまざまな言語や文化に触れる機会が当たり前になってきました。
さらに、グローバルビジネスや国際交流の広がりによって、異なる文化的背景や価値観を持つ人々と食卓を共にする場面が日常的になっています。
しかしその一方で、日本人がこれまで当然のように「食べているもの」が、他の誰かにとっては宗教・文化・信念・体質・嗜好など様々な理由で“食べられないものであることに直面する機会が増えてきています。
本記事では、世界の「食べられない理由」をカテゴリごとに整理し、なぜその食材や料理が避けられているのか、その背景と共に表にまとめました。多様な食文化への理解は、今後の共生社会において不可欠な教養になっていくことと日々感じています。
※なお、同じ地域や宗教であっても、個人ごとに事情や価値観は異なります。さらに「ムスリムで且つヴィーガン」といった事例も昨今増えているので、あくまでも参考としてご認識ください。
分類 | 種別 | 例 | 背景・理由 | 主な該当地域 |
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宗教的理由 | ハラール | 豚肉、アルコール、非ハラール処理肉など | イスラム教の教義 | 東南アジア、中東 |
コーシャ | 豚肉、甲殻類、乳と肉の同時摂取など | ユダヤ教の教義 | イスラエル、アメリカのユダヤ人 | |
ヒンズー教 | 牛肉、牛由来製品 | ヒンズー教の教義(牛は神聖な動物とされる) | インド、ネパール | |
ジャイナ教 | 肉、魚介類、根菜類、蜂蜜など | ジャイナ教の教義(殺生禁止・微生物への配慮・不殺生主義) | インド、ジャイナ教徒の家庭 | |
文化的理由 | 体冷やすもの | 冷水、氷入りドリンク、生野菜 | 体を冷やすと病気になるという伝統的な中医学の考え方 | 中国本土、台湾、香港 |
生食文化 | 生魚、生卵、生肉など | 寄生虫・食中毒への懸念 | 世界中に広く存在 | |
馬肉 | 桜肉、馬刺しなど | 馬は「仲間」「ペット」としての情緒的価値が高い | 米国、イギリスなど欧米諸国 | |
主義的理由 | ベジタリアン | 肉、魚 | 動物愛護、環境負荷の削減、宗教的理由など様々 | 世界中に広く存在 |
ヴィーガン | 肉、魚、乳製品、卵、蜂蜜 | 動物愛護、環境負荷の削減、宗教的理由など様々 | 世界中に広く存在 | |
グルテンフリー | 小麦、大麦、ライ麦 | 健康志向 | 世界中に広く存在 | |
健康・体質 | アレルギー | 卵、乳、小麦、そば、ナッツ類など | アレルゲンによる重篤な症状リスク | 世界中に広く存在 |
グルテンフリー | 小麦、大麦、ライ麦 | セリアック病、過敏症 | 欧米中心、日本でも増加中 | |
嗜好的理由 | におい | 納豆、くさや、ドリアンなど | 強烈な匂いに対する生理的な嫌悪 | 世界中に広く存在 |
食感・見た目 | イカやタコの刺身、ゼラチン質のもの、内臓類 | 見た目の抵抗感、歯応え・舌触りの不快感 | 世界中に広く存在 |