事業者とどのように関わっていくべきか
訪日観光客の増加や、外国人居住者の増加に伴い、日本全国各地でフードダイバーシティ対応の重要性が高まっています。特に、ベジタリアン、ヴィーガン、ハラール、アレルギー対応などのニーズは年々増加しており、自治体や支援機関が飲食店・宿泊施設のサポートを行い、地域の活性化、観光振興に寄与しています。
しかし、短期的視点でとにかく対応店を増やせばいいのかと言ったら決してそうではなく、長期的視点で地域の飲食店や宿泊施設が自走し、持続可能に運用ができる仕組みづくりが重要だと弊社では考えています。ここでは、自治体や支援機関が知っておくべきフードダイバーシティ対応の具体的なステップついて解説します。
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求められるフードダイバーシティ対応:ゴールは「対応すること」か「対応して結果を出すこと」か
①セミナーの開催
(基礎を学ぶ・対応したい事業者を募る)
まずは、フードダイバーシティ対応の必要性や基本知識を学ぶためのセミナーを開催します。
主な内容:
- フードダイバーシティの基礎知識
- 対応のメリット(売上向上、集客効果、地域活性化)
- 事例紹介(成功事例や失敗事例)
- 試食の提供等(料理人向け)
この段階で、対応に興味のある飲食店や宿泊施設の事業者を募ります。

セミナーの様子
②実地支援
(興味を持った事業者に個別の支援を実施)
興味を持った事業者が本格的な対応を進めることができるよう、食材・調味料、メニュー開発、オペレーションの確認を実地支援として行います。
ポイント: 食材・調味料の確認
- 使用する食材・調味料が正しいかどうかの第三者チェック
- 料理人が出したい味を作るためのおすすめ食材・調味料の紹介
- 仕入れ先との調整
Can eatではなくWant to eatのメニュー開発
- ただ対応するだけ(Can eat)ではお客様に選んでいただけないので、お客様のニーズを反映させたメニュー(Want to eat)の開発支援
- ニーズに関するトレンドの提供
オペレーションの確立
- 店舗にとって無理のない、効率的な方法を提案
- 社内での連携方法に関するマニュアル整備
このプロセスは店舗が自立して対応できるよう「支援」することが重要です。

実地支援の様子
③対応ポリシーの完成
(お客様に正しく情報を伝える / お店を守るためのルール作り)
実地支援でメニューが完成したら、次に対応ポリシーを策定します。
なぜポリシーが重要なのか?
- お客様に誤解を与えない&トラブルを防ぐため
- 店舗としてのレギュレーションを固めるため
- 旅行会社との連携を行うため
例えば、以下のようなポリシーを作成することが推奨されます。 ハラール対応:「ハラール認証は取得していませんが、豚肉成分・アルコールは不使用です」
ヴィーガン対応:「厨房は一般メニューと共用ですが、動物性食材は一切使用していません」
この段階も、店舗側の努力が必要不可欠であり、「支援」は重要ですが、「代行」では長期的に店舗のためになりません。

ポリシー案
④WEB周りの整備
(自社HP・Googleビジネスプロフィール・SNS)
どれだけ良いメニューを作っても、お客様に知ってもらえなければ意味がありません。そのため、WEB周りの情報整備が重要になります。
整備すべきポイント: 自社HPに対応メニューを掲載
Googleビジネスプロフィールに「ヴィーガン対応」「ハラール対応」などの情報を追加
InstagramなどSNSに必要情報を記載
ここまでが整って初めて、専門サイト(Happy Cowなど)への登録が可能になります。こちらも「支援」が重要です。

各種サイトに情報登録
⑤専門サイト(Happy Cow / Halal Gourmet Japanなど)への登録
(④が整備されていないと登録不可な場合が多い)
専門サイトへの登録は集客の面で非常に効果的ですが、登録にあたっては④の情報が審査対象となりますので、④がないと基本的には審査が通りません。
主なサイト:
- Happy Cow(ヴィーガン・ベジタリアン向け)
- Halal Gourmet Japan(ムスリム向け)
- 日本素食交流會 Japanese Vegetarian Community(主に台湾ベジタリアン向け)

主な専門サイト
⑥各種メディア(YouTube・インフルエンサーなど)での情報発信
(②から⑤がないと、情報拡散を行っても成果につながりません)
訪日旅行客が見るメディアなどに掲載依頼をする
InstagramやYouTubeのインフルエンサーに紹介してもらう
地域の観光情報サイトにも掲載する
いきなり⑤から、もしくはいきなり⑥からの情報発信は基本的には難しいですし、情報発信をしたとしても効果はほとんどありません。
②③④が特に重要!そして代行ではなく「支援」が基本で「説得」はNG
フードダイバーシティ対応を成功させるには②③④の3つが特に重要となりますが、こちらについては店舗努力がないと絶対に成立しません。これらを「支援」ではなく、一時的な形にするため「代行」してしまうと、それが店舗側で癖になってしまい自走ができなくなってしまいますので、焦らずに進めていくことが重要です。
また、「支援」と「説得」は全く異なります。フードダイバーシティ対応は、各店舗それぞれの状況、業態、経営方針、スキル、考え方に関わるため、「とりあえずの対応」をゴールとした無理な説得は、まともなメニューもできなければ、成果に関しての責任転嫁も生み、さらに自走化もできずとなり、結果的には何も残らなくなります。
つまり、飲食店・宿泊施設との関わりとしては、以下が重要になります。
・経営判断のために必要な情報やノウハウを提供する
・「説得」は絶対に行わない
・事業者の努力が必要な部分を理解し、ときには指摘を行う
以上となります。
地域全体でフードダイバーシティ対応を進めることで、訪日観光客の増加や外国人居住者の受け入れ体制を作り、観光振興や経済活性化を進めていきましょう。