多様な食習慣への対応が「選ばれる理由」に

国土交通省観光庁が2026年3月に公開した資料「多様な食習慣を持つ訪日外国人旅行者の実情」において、2025年の訪日ベジタリアン等旅行者および訪日ムスリム旅行者の推計値が示されました。

それによると、2025年の訪日ベジタリアン等旅行者は約221万人、訪日ムスリム旅行者は約164万人と推計されています。

出典:観光庁「多様な食習慣を持つ訪日外国人旅行者の実情」

観光庁資料(PDF)

2025年の訪日外国人旅行者は約4,268万人

2025年の訪日外国人旅行者数は約4,268万人となり、2019年の約3,188万人を約1,100万人上回って過去最高となりました。

また、訪日外国人旅行消費額も約9.5兆円と過去最高を記録。訪日外国人一般客1人当たりの旅行支出は22万8,809円で、2019年比44%増となっています。インバウンド市場そのものが大きく拡大する中で、ベジタリアン・ヴィーガンやムスリムなど、多様な食習慣を持つ旅行者の受入環境整備も、これまで以上に重要になっています。

訪日ベジタリアン等旅行者は約221万人(全体の約5.2%)

観光庁資料では、2025年の国・地域別訪日外国人旅行者数に、Euromonitorによる2023年の国別ベジタリアン等人口比率を掛け合わせ、訪日ベジタリアン等旅行者数を推計しています。

その結果、2025年の訪日ベジタリアン等旅行者は約221万人。2025年の訪日外国人旅行者約4,268万人の約5.2%に相当するとしています。

国・地域別では、

  • 台湾:約83.2万人
  • 中国:約38.7万人
  • 韓国:約27.7万人
  • 米国:約13.6万人
  • カナダ:約8.1万人
  • 香港:約7.0万人
  • インド:約6.4万人
  • オーストラリア:約5.2万人
  • タイ:約4.6万人
  • シンガポール:約4.6万人

と推計されています。特に台湾だけで約83万人と、非常に大きな市場となっている点は注目すべきでしょう。なお、世界のベジタリアン等人口についても増加傾向が続いており、観光庁資料では2025年に約5.6億人に達したとしています。

訪日ムスリム旅行者は約164万人(全体の約3.8%)

ムスリム旅行者についても、具体的な推計が示されています。

観光庁は、2025年の国別訪日旅行者数にPew Research Centerによる2020年の国別ムスリム比率を掛け合わせ、訪日ムスリム旅行者を約164万人と推計しています。

これは2025年の訪日外国人旅行者全体の約3.8%に相当します。

国・地域別では、

  • インドネシア:約55.7万人
  • マレーシア:約40.8万人
  • 中国:約16.4万人
  • シンガポール:約11.7万人
  • フィリピン:約5.8万人
  • タイ:約5.5万人
  • インド:約4.8万人
  • フランス:約4.2万人
  • 米国:約4.0万人
  • オーストラリア:約3.7万人

と推計されています。特にインドネシアとマレーシアの2カ国だけで約96.5万人となり、推計される訪日ムスリム旅行者全体の約6割を占めています。なお、世界のムスリム人口は増加傾向にあり、2020年には約20億人に達したとしています。

「1人の対応」がグループ全体の選択につながる

ここで重要なのは、約221万人、約164万人という数字だけを見ることではありません。

旅行は、一人で行動するとは限りません。家族旅行や友人同士、団体旅行などでは、グループの中にベジタリアンやムスリムなど、食事に配慮が必要な人が一人でもいれば、「その人が食べられるか」がレストラン選びの条件になることがあります。

つまり、対応することで獲得できる可能性があるのは、その一人だけではありません。

「この店なら全員で食べられる」と判断されれば、グループ全体から選ばれる選択肢となります。

そして、逆も然りです。どれだけ魅力的な料理やサービスを提供していても、グループのうち一人が食べられなければ、その一人ではなく、グループ全体を逃してしまう可能性があります。

フードダイバーシティ対応は、「少数のお客様のためだけの対応」ではありません。

一人の「食べられる」をつくることが、その先にいる家族や友人、同行者を含めたグループ全体から「選ばれる」ことにつながります。

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