フードダイバーシティ対応しないことこそが最大の非効率に

近年、飲食業界では「人手不足」が大きな課題となっており、先日も日本経済新聞ではその機会損失が全産業で年間16兆円に達したという記事が出ました。

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一方で海外からの旅行者の数は右肩上がりとなり、ベジタリアン、ヴィーガン、ハラール、グルテンフリーなど、フードダイバーシティ対応の必要性が高まる中、「対応が大変」「人手が足りないから後回し」といった声も少なくありません。

しかし実は、フードダイバーシティ対応をしないことこそが、生産性を下げる要因になっているのです。

イレギュラー対応が通常オペレーションを圧迫する

対応を仕組み化していない店舗では、「アレルギー」「宗教的配慮」「ベジタリアン対応」などが発生するたびに、その都度キッチンとホールが確認・判断・調整を行う必要があります。

一見「対応しない方が楽」に見えますが、実際にはイレギュラー対応が入るたびにオペレーションが止まり、他の業務の流れが滞る結果に。実は対応しているメニューをグランドメニューに載せておいたり、明確なルールと情報共有を行うほうが、むしろ効率的に運営できるケースが多いのです。

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お客さまに色々聞かれると、ホールスタッフの足が止まる

「このメニュー、動物性のものは入っていますか?」
「アルコールは使われていますか?」

こうした質問に、現場スタッフがその場で答えられない場合、厨房への確認や上司への相談が発生し、接客の流れが止まってしまうことがあります。結果として、他のお客さまの対応が遅れたり、スタッフが不安を感じたりと、生産性と接客品質の両方に影響が出ます。

逆に、フードダイバーシティ対応を明示し、メニューやマニュアルを整備しておけば、スタッフが迷わず対応でき、「現場力」そのものが上がるのです。

団体の一人対応ができず、案件を取りこぼす

海外からの団体予約では、例えば10名のうち平均的に3名ほどフードダイバーシティ対応が求められます。

その際、施設側が「対応できません」と答えてしまうと、団体全体の予約が別の施設に流れてしまうことも。
つまり、「1名に対応できないことが、20人・50人・100人の機会損失につながる」時代になっているのです。

フードダイバーシティ対応は、コストではなく、リスク回避と売上確保の手段と捉える必要があります。

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まとめ:対応することが、最も効率的な経営へ

フードダイバーシティ対応とは、「特別扱い」ではなく、現場の混乱を減らし、売上機会を守るための“仕組みづくり”です。対応をしないことがイレギュラーを生み、対応を整えることが標準化と効率化を生みます。

これからの時代、“対応しないこと”こそが最大の非効率なのです。