「専用食」から「人気メニュー」へ進化させる現場のヒント
昨今、ヴィーガン、ハラール、グルテンフリーといった食の対応は、訪日観光客だけでなく、国内の生活者にも広がる中、もはや「対応しているかどうか」ではなく、「どのように対応しているか」が問われる時代です。
またフードダイバーシティに取り組むことで得られるメリットも明確です:
・団体を獲得できる
・Google等の評価点数がアップ
・リピート客の増加
参考記事
しかしながら、「ヴィーガン専用メニューを導入したものの、ABC分析ではCランクだった」という状況になると、現場を十分に理解していない経営層や本部が、メニューの見直しや削除を検討する可能性があります。
そのリスクを避けるためにも、こうした対応メニューはABC分析上で最低でもBランク以上に位置づけられることが望ましく、そのための工夫が現場には求められます。

なぜ「C」に入るのか
何も考えずにフードダイバーシティに対応しようとすると、多くのお店が”とりあえず”という形で「ムスリム専用」「ヴィーガン専用」といった“特別対応メニュー”を用意します。しかしながら、それらのメニューがCランク(売上比率の低い商品)に陥るケースが多発しています。
その背景にはこんな要因があります:
- ①“Want to Eat”の料理ではない
対応条件を満たすだけで、味・見た目・満足感の面で「わざわざお金を出して食べたい」と思わせる魅力に欠けているケースが多いです(例:ヴィーガン対応メニューが精進料理、ハラール対応メニューが野菜や魚料理等)。
- ②一般客にとって「専用メニュー」に見えるネーミング
「ヴィーガン●●」「ハラール●●」などの表記が目立つと、一般客は「自分には関係ない」とスルーしがちです。
- ③違和感のある代替食材
「大豆ミート」や「ヴィーガンチーズ」など、一般人が日常的に食べ慣れていない食材は違和感を持たれることが多く「なんとなく避けられる」要因になってしまうことがあります。
- ④「とりあえず作った」感が伝わってしまう
盛り付け、ネーミング、説明文に“熱意”が感じられないと、印象も薄くなりがちです。
これらからの学びは明快です。「対応していること」だけでは、売れない。そして「よかれと思ったこと」が裏目に出ることです。
「対応メニュー」を「売れるメニュー」に変える工夫
①“Can Eat“ではなく、“Want to Eat”にしっかりと向き合う
対応要件を満たすだけでは選ばれません。
「お金を払ってでも食べたい」と思わせる味・見た目・満足感が伴ってこそ、A・Bランクに入る商品になります。
求められるフードダイバーシティ対応:ゴールは「対応すること」か「対応して結果を出すこと」か
② 一般客も普通に注文するネーミングを考える
「ヴィーガン●●」「ハラール●●」と書かれていると、関係ないと思われて避けられがちです。
対応内容はアイコンや小さな注釈で伝え、メニュー名を“誰でも選びたくなる”ようなものにしましょう。

スターバックスでは右側にひっそりと「Plant Based」の表記
③ 一般客も普段食べている食材でレシピを組む
大豆ミートや代替チーズなど、特別な食材に頼ると、かえって“違和感”を与えることも。
野菜、豆腐、きのこなど、誰もが親しんでいる食材をベースにメニューを設計することが成功の近道です。
④ ①、②、③を妥協なく真剣に取り組む
「とりあえず作った」感はお客様にすぐに伝わり、売れません。
ネーミング、盛り付け、説明、導線など、すべての要素を丁寧に設計し、“誰が食べてもおいしい”と感じられるクオリティに仕上げる姿勢が求められます。真剣さは、メニューの雰囲気や売れ行きにも確実に現れます。
売れるメニューは“誰でも選べる工夫”がされている
フードダイバーシティ対応で成果を上げているお店のメニューは、「対応している」ことを強調せず、むしろ“誰でも食べたくなる”設計になっています。特別感を出すのではなく、自然に選ばれ、食後の満足感も高いこと。そこが、Bランク以上に入る最大のポイントです。
「食べたい」と思わせる魅力があるか?
「また来たい」と思わせる体験につながっているか?
この視点で見直すことが、持続可能なフードダイバーシティ対応の第一歩です。