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【この店舗は移転しました】 詳しくはこちらを御覧ください。https://www.halalgourmet.jp/ja/restaurant/743026
「和食でも、多国籍でもない新しい選択肢をムスリムの方にも楽しんでもらいたい。」神戸でハラール認証カフェを経営するSharing Cafe Kobe Nagomi 中谷吉弘氏
この記事は「リスクよりも情熱が勝った」と語る、ハラール認証を取得したSharing Cafe Kobe Nagomiのオーナーである中谷吉弘氏の取材記事です。10年以上サラリーマンをしたのちに結婚、子育てをしながら神戸でハラール認証カフェを家族で営む中谷氏。そんな中谷氏のこれまでと現在の取り組みについてお伺いしました。
プロフィール:中谷吉弘氏
大学卒業後、商社にて勤務。在籍中、駐在先としてクウェートへ2年間駐在する。帰国後イスラム教徒の友人たちが日本を訪れるが、食事と礼拝場所で困ることが多く、解決策はないかと脱サラし、和歌山大学大学院観光学研究科に入学し「イスラム教徒の訪日観光意識」をテーマに研究。修士(観光学)の学位を取得する。現在は中東和平プロジェクトに参加した経験から「観光を通じた世界平和」をモットーに、イスラム教徒を含む、より多くの人が一緒に食事できるよう、ハラール認証を取得したカフェを神戸市の自宅を改修し、家族で営む。
クウェートへ駐在から、脱サラして和歌山大学大学院へ
-本日はよろしくお願いします!
まずは中谷さんのこれまでをお聞きしたいです。中谷さんがカフェを開業するまでの経緯についてお聞かせください!
もともとは商社に勤めていて、その間クウェートに2年間駐在していました。駐在中にたくさんのムスリムの友人ができたのだけど、帰国してからその友人がよく遊びに来てくれたのですよね。その時は10年ほど前で、今はハラル対応のお店は当時と比べると増えてきてはいるけれど、当時は本当にありませんでした。あっても基本的にインド、パキスタン、トルコ料理などで、礼拝所はもっとない。百貨店など商業施設にもなくて本当に困っていました。特にクウェート人のような私のムスリムの友人は規律に厳格な人が多いので。
※現在クウェートでは飲酒行為は違法です。高級ホテルやレストランでの提供もしておりません。(http://m.anzen.mofa.go.jp/mbconsideration.asp?id=49)
-クウェートのイスラムの規律ってそんなに厳しいのですね。彼らは日本でどんな過ごし方をされていたのですか?
例えば、お昼にハラール対応レストランの場所を探して行ってると、メインの観光ができないのですよね。だから昼ごはんは毎回我慢していました。礼拝に関してだと、ある私の友人は礼拝用のマットを紙袋に入れて持ち歩いていたりしていたね。そういった備品を置いているところもなかったので、常に片手がふさがっていました。時間になったら公園とかを探してお祈りしてもらっていましたね。僕が当時よくしていたのは、人影の少ない百貨店の屋上を使わせてもらっていました。
当時はあまりイスラムに対する認識も低かったので、個室の利用を百貨店にお願いすると救急車が必要か尋ねられたこともありました。笑 クウェートからの友人が来るたび「こんな不便なことないわ〜」ってずっと思っていましたね。
-そういうことを感じながらお仕事は続けていたのですよね。
クウェートから帰国後約8年ほど働いていました。その8年間、こんなに大変な生活をしないといけないのに、友人たちは何回も日本に来てくれました。しかし同時にその度不便な状況が変わらないのを実感していました。こんな過酷な状況を見て、段々自分が解決しないといけないと思い始め、退職しました。
(クウェート人の友人と。中谷さんも馴染んでおられますね!)
-その後、和歌山大学大学院観光学研究科に入学されていますが、なぜ和歌山大学を選ばれたのですか?
観光学という学問は日本ではあまり有名ではないのだけれど、実は和歌山大学だけが日本唯一国連世界観光機関(UNWTO)の関連組織であるUNWTO Themis Foundationが実施する認証制度「UNWTO. TedQual(Tourism Education Quality)」の認証を取得しています。だから観光学を学ぶのであれば1番和歌山が適しているのかと思い、そこにしました。
※和歌山大学観光学部が国連世界観光機関(UNWTO)の関連組織であるUNWTO Themis Foundationが実施する認証制度「UNWTO. TedQual(Tourism Education Quality)」の認証を取得しました。国際観光学研究センターのサポートの下、申請準備とTedQual認証のための100項目以上の厳しい基準をクリアし、国内では唯一、初めての取得となりました。
(https://www.wakayama-u.ac.jp/news/2017012300255/)
大学院ではどのような研究をされていたのでしょうか?
研究テーマはイスラム教徒の訪日観光意識です。仮に日本に来た時に、どういったものを必要として、何故そう思うか。フィールドワークでカタール、クウェート、UAEの3か国で合計280人のアンケートを取って来ました。
例えば非イスラム国に行く場合はどういったことに注意しますか?などを細かく調査しました。他には男性同士で非イスラム国へ行く場合と女性を連れて行く場合は対応変えますか?などなど。アンケート結果を通じてそれをどう改善すれば日本に来てもらえるかっていう研究をしていました。
ムスリムの「新しい選択肢」、ハラール認証カフェの経営
-大学院卒業後、カフェを経営されています。カフェ経営を決めた理由は何ですか?
食の分野ですね。食において困っている人が多いということは知っていましたし、現在はハラール対応の飲食店も増えてきてはいますが、和食や懐石料理、お寿司、ラーメンが多いですよね。それ以外はパキスタンやインドなどの多国籍料理。その状況を見たときに、意外とよくあるパスタやハンバーガーってあまりないなと思いました。観光や日本に住むムスリムの方も毎日和食や多国籍料理を食べるわけではないので、彼らにとっても新しい選択肢を作りたいと思い、カフェを開くことにしました。
-メニューも詳しくお聞かせください。
メニューとしては、やはり日本らしい食べ物を食べて頂きたいと思っています。
当店では「すき焼きパスタ」、「照り焼きチキンピザ」「和牛、国産鶏肉ハンバーガー」といったように、日本風にしています。観光客や在日ムスリムの中には、日本食はお口に合わない方もいらっしゃいます。だからといって日本の食材が食べたくないわけではないのですよね。
せっかく日本に来ていただいたのだから、当店のメニューで日本を体験していただきたいですね。
(すき焼きパスタ)
-なるほど、、確かにいつも日本食が食べたいということでもないですよね。日本食以外でも日本の食材を体験することは日本でしか中々できないでよね!他にはありますか?
デザートですね。当店ではよくデザートを食べながら女子会を開いているお客様も多いです!
-製造品のお菓子を除いて、ケーキやパフェのようなハラール対応されたデザートは多くないのです。
だからランチ、デザート、ドリンクというような女子会フルコースが堪能できます。笑
-カフェということもあるので、レストランや、ラーメン屋などの専門店とは違う、落ち着いた雰囲気なので女子会にはうってつけですよね!僕はインドネシアによく行くことがあったのですが、カフェははたくさんあります。彼らはバーや居酒屋という選択肢がない分カフェの存在は重要ですよね。
甘いものが好きというのもありますね。
(落ち着いた雰囲気ですね。昼寝したくなりそうだ。。)
-メニュー以外にもカフェの特徴はありますか?
ムスリムに加えて、女性とお子さんにも優しいお店であるところですね。当店では赤ちゃん用のオムツも用意しています。もちろん礼拝のためのウドゥや礼拝スぺース、キブラコンパス、マット、礼拝着といった礼拝セットもご用意しています。
(礼拝スペース、完備しております!)
-立地についてなのですが、和歌山から神戸まで引っ越してこられた理由はあるのでしょうか?
2つあります。1つは神戸モスクですね。神戸モスクがあることでムスリム観光客や在日ムスリムの方もよく来ていただいています。今年のラマダン明けはモスクに300人ほど来て交通整理が行われるほどでした。
もう1つは兵庫県の制度です。兵庫には移住開業促進制度なるものがあり、商売を始めやすい環境ですね。資金面でもそうですが、行政組織のお墨付きがあるということも大きいです。イスラム対応はリスクもあるのですよね。特にこのカフェがあるのは住宅地ですから、行政の承認があるということはそういった信用にもなりますからね。
Halal Media Japanの代表の守護さんも言っていましたが、ハラール関連の事業をするには官民、モスクと、いろいろな力を合わせてやっていくことは本当に大事だと思います。
私ひとりが頑張っても、兵庫県だけが頑張っても意味がないということです。実現したい姿のためにみんなで応援し、賛同していくことが大切です。
ふるさと起業・移転促進事業(https://web.pref.hyogo.lg.jp/sr10/furusatokigyou.html)
-お店を始めるのに一番苦労したことはありますか?
ハラール認証ですね。書類などもありますし、時間やコストなど、負担がかかりました。ただ、誰もが安心して食せるという面では最高のマークだと思っているので、認証をとってよかったと思います。現に相談も受けますが、日本に来られるムスリムの方の中には、お店でアルコールが提供されていると食べることができない方もたくさんいます。当店のハラール認証は宗教法人から頂いているものですが、賛否はともかくそういったムスリムフレンドリーのお店では厳しいという方にも来ていただけると思います。
ハラール認証とは言えど、その種類もたくさんあり、ほとんどは認証を取っていてもお酒を出しているところがほとんどです。一方で認証を取らなくても、しっかりハラール対応をすることでムスリムの方々に来ていただくこともできます。イスラムの解釈というのは国や地域によって様々なので、何のために認証をとるのかをしっかり考えたほうがいいですね。
(ハラール認証取得済みですよ!)
-ご家族がいる中で、これまで会社を退職されたり、新しい環境でカフェを開業されたりと、新しいことをする際にはリスクや不安を感じることもあったと思うのですが、どのように乗り切られて来たのですか?
もちろんリスクや不安も感じましたが、それ以上に情熱が勝りました。情熱に勝るものはないと思っています。過去に仕事をしてきて結果も出してきましたが、そういうときもすごい情熱で接してきました。適当にやってうまいこといくものなんて1つもないし、強い情熱で本気で頑張って少し成功する程度だけど、今こうして和気藹々とした雰囲気でこのカフェが成り立っていて本当によかったと思っています!
-たくさんリスクも考えた上でも、やはり情熱が上回った結果、今こうしてカフェがあるわけですね!
より多くの人が一緒に食事ができるために
日本人の方々にもオープンだと思いますが、日本人の方々も来られるのでしょうか?
もちろんです!最近では異文化に興味がある方もよく来られています。お客様の中には「ムスリムと接する機会があるから、ハラールについてお話が聞きたい」と、訪ねられた方もいらっしゃいました。興味のある方はそういったことが知りたいので、私の経験やハラール対応などを知っていただいたりしていますね。学生から、私の親世代の方まで来ていただいているので、本当に嬉しいですね。
例えば、ハラール対応って大掛かりなものだと思われている方も多いので、実際に対応されたメニューを食べていただいたり、詳しいルールのようなところまでお伝えしたりしています。
-最後になりますが、この記事をご覧の方にお店のアピールをお願いします!
当店はムスリムとお子さんと家族に優しいお店を目指していて、礼拝スペースやおむつの常備などで、いつでも来ていただける対応をしています。お食事に関しては、中々食べられない、和牛バーガーやすき焼きパスタといった日本食でも、ウェスタンでもないミクスチャーな料理もご用意しています。私だけでなく、家族で経営しているので、ホームステイに来る感覚でお店に来ていただければと思います!
また、観光客にももっと来てもらえるように、新しい取り組みも始めているので、ぜひSNSなどでチェックしていただければと思います。
(取材終了後のおふたりと睡眠中のお子様)
取材後記
神戸の住宅街で家族経営されている中谷氏。残念ながら上のお子様たちにお会いすることができなかったですが、吉弘さんと奥様にもお話をお伺いすることができました。吉弘さんが会社を退職するお話について、退職されるか悩まれている状況を見た奥様は「悩むよりもやめたら?」と、背中を押したそうです。熱い情熱で日本を訪れる全てのムスリムが安心して過ごせる環境作りには、ご家族全員がいないと成し得ないものなのだと感じました。まさにアットホームな雰囲気でのんびりできるような空間で、楽しく取材させていただきました!ありがとうございました!
Sharing cafe Kobe nagomi のウェブサイトは以下から!↓
Sharing Cafe Kobe nagomi
- ADDRESS
- 神戸市兵庫区神田町33-10
- OPEN
- 完全予約制
- TEL
- 078-599-8090
- WEB SITE
- https://www.kobenagomi.com/