日本の料理は世界平均と比べてどうなのか
訪日外国人旅行者の増加に伴い、ヴィーガン、ハラール、グルテンフリー、アレルギー対応など、フードダイバーシティへの取り組みは全国で広がっています。
その受入環境整備が進む中で、次の段階として考えたいテーマがあります。
それは、「その人にとって、おいしい味になっているか」という視点です。
今回、世界各国の塩分消費量と砂糖・甘味料消費量のデータを比較したところ、国によって味覚の背景が大きく異なることが見えてきました。

日本は世界的に見ても「塩分が多く、砂糖が少ない」
図表を見ると、日本は世界平均と比較して、
- 塩分消費量が多い
- 砂糖・甘味料消費量は比較的少ない
という位置にあります。
醤油、味噌、漬物、だしなど、日本の食文化は塩味を上手に活用して発展してきました。そのため、日本人にとっては「ちょうど良い」と感じる味付けでも、海外の人にとっては塩辛く感じられることがあります。
欧米は「甘く」、そして意外と塩分が少ない
アメリカ、イギリス、ドイツ、オランダ、カナダなどを見ると、日本よりも塩分消費量が少ない一方で、砂糖・甘味料消費量は大きく上回っています。もちろん、これは「甘い料理が好き」という単純な話ではありません。
しかし、
- 日常的に消費している糖分量
- 慣れ親しんでいる味のバランス
には違いがあることが分かります。同じ料理を食べても、日本人と海外の旅行者では受け取り方が異なる可能性があるのです。
アジアでも味覚は大きく異なる
「アジアだから一括りにできる」というわけでもありません。
韓国やタイは日本以上に塩分消費量が多く、中国も日本に近い傾向があります。
一方で、
- マレーシア
- インドネシア
- フィリピン
などは比較的塩分消費量が少なめです。
また、インドは砂糖・甘味料消費量が少ない一方で、塩分消費量は比較的多いという特徴があります。
「食べられる」と「おいしい」は別の話
フードダイバーシティ対応に取り組む際、多くの事業者はまず、
- ヴィーガン対応
- ハラール対応
- グルテンフリー対応
などに注力します。もちろん、これは非常に重要なことです。
しかし、「食べられる」ことと「おいしい」と感じることは別です。
例えば、ヴィーガン対応やハラール対応ができていたとしても、「味が濃い」「塩辛い」「甘すぎる」「逆に味が薄い」と感じられてしまえば、残念ながらお残しにつながる可能性があります。
データを見る際に気を付けたいこと
ただし、こうしたデータを見る際には注意も必要です。日本国内でも関東と関西で出汁や味付けが異なるように、一つの国の中にも地域差や個人差があります。
例えば、中国には広東料理、四川料理、上海料理などそれぞれ異なる特徴があり、インドも地域によって味付けや使用するスパイスが大きく異なります。そのため、「アメリカ人はこう」「インド人はこう」と一括りに考えることはできません。
今回のデータは、あくまでも各国全体の傾向を示したものであり、個々の旅行者の好みを示すものではありません。しかし、日本人とは異なる味覚環境で育った人々が世界中に存在することを理解する上での、一つの参考データとして活用できるのではないでしょうか。
味を変えるべきかどうかは経営判断
ここで誤解してはいけません。この記事は、
- 欧米人向けに塩分を減らすべき
- 外国人全般に甘くするべき
という単純な話ではありません。
味を変えるかどうかは、あくまで事業者の経営判断です。
例えば、
- 外国人の方にも日本本来の味をそのまま届けたい
- 来店は日本人客を中心にしたい
- 旅行者を積極的に取り込みたい
など、目指す方向によって答えは変わります。
重要なのは「知った上で判断すること」
今回のデータが教えてくれるのは、「世界の人々は、日本人と同じ味覚で育っているわけではない」という事実です。
そして重要なのは、その事実を知ることです。
知った上で、
- 変えない
- 一部だけ変える
- 積極的に最適化する
どれを選ぶかは、事業者自身が判断すべきことです。
フードダイバーシティ対応は、単に宗教や食習慣に対応することだけを意味するものではありません。相手の文化や背景を理解し、その先にある「満足」まで考えることが重要です。
そして、そのための判断材料の一つとして、世界の人々がどのような味覚の中で育ち、どのような味に慣れ親しんでいるのかを知ることも大切なのではないでしょうか。
フードダイバーシティ対応の先にあるもの
近年、「ヴィーガン対応しています」「ハラール対応できます」という情報発信を目にする機会が増えました。もちろん、それは訪日外国人旅行者にとって非常に重要な情報です。
しかし、旅行者が本当に求めているのは、単に食べられることだけではありません「おいしかった」「また来たい」「友人にも勧めたい」そう思ってもらえる体験です。そのためには、宗教や食習慣だけでなく、味覚の違いについても理解を深めることが求められる時代になりつつあります。
味を変えるかどうかは経営判断です。ただ、判断をするためには、まず知ることが必要です。
世界の人々がどのような味に慣れ親しみ、どのような食文化の中で育ってきたのか。
その理解こそが、フードダイバーシティ対応の次のステージにつながるのではないでしょうか。
出典
・Honkawa Data Tribune「世界の塩分消費量比較」
・Honkawa Data Tribune「世界の砂糖・甘味料消費量比較」
※図表は上記データをもとにフードダイバーシティ株式会社作成。