「“輸出”から“共創”へ――マレーシア企業と日本市場の交差点
2025年6月24日(火)、マレーシアのHalal Development Corporation(HDC)が主催するオンラインウェビナー「Navigating Successful Halal Market Entry into Japan(日本のハラール市場参入を成功に導く)」が開催されました。日本市場への輸出に関心のあるマレーシアの中小企業を主な対象とし、多くの経営者やマーケティング担当者が参加しました。
ウェビナーは90分構成で、講演とパネルディスカッションの2部で構成。冒頭では、HDCの担当者より、ハラール認証を持つマレーシア企業の日本市場への関心が高まっていること、特に今後開催される「JFEX Summer Show 2025」への参加企業が増加している現状が紹介されました。
続いて、日本側パネリストとして登壇したフードダイバーシティ株式会社の横山は、日本のムスリム人口が20年で3倍以上に増加している実態に触れつつ、日本人消費者のハラールに対する受け止め方についても解説。「ハラール=宗教」という先入観を和らげるためには、“品質”や“アジアらしさ”といった価値を前面に出すことが有効であると提言しました。
また、横山は、輸出戦略の明確化のために「ターゲット分類マトリクス」を提示しました。
横軸を「日本国内」から「グローバル市場」、縦軸を「日本人」から「外国人」で分類し、ターゲットは4つのカテゴリーに分けられることを提示。
- Category A(左上):訪日観光客や在日外国人。インバウンド市場。
- Category B(左下):日本人消費者。品質・安心感のアプローチが鍵。
- Category C(右下):海外の日本食レストランや日系輸出企業。
- Category D(右上):海外にいる“日本食ファン”の非日本人層。
「自社の製品やサービスが、どの象限のどの相手を対象にしているかを明確にすることで、プロモーション戦略やパートナーシップ構築の方向性が変わってくる」と横山は開設しました。
ディスカッションでは、マレーシア側の輸出支援専門家・Mohd Hafizi Yusoff氏との対話を通じて、冷凍・即席食品や文化体験型商品の可能性、観光・医療・教育といったF&B以外の分野への展開についても議論されました。参加者からは、「どのように現地の流通パートナーを探すべきか」「観光客と在住者、どちらをターゲットとするべきか」といった実践的な質問も多数寄せられ、日本市場に対する具体的な関心の高さがうかがえました。
登壇者の発言にもあったように、「市場参入の鍵は、輸出だけでなく共創(co-creation)である」という視点が、これからのビジネスの方向性を示しています。日本国内では制度や認知がまだ発展途上の分野もある中で、現地パートナーとの関係構築が長期的成功の鍵となることが、今回のウェビナーを通じて共有されました。今後のマレーシア企業による日本市場への本格的な展開に向けた第一歩となる有意義な機会となりました。