ムスリム旅行者の本音に迫る

インバウンド需要が再び活性化する中、注目される「ムスリム対応」。
「とりあえず豚とアルコールを抜いたメニューを出していればOK」…そう思っていませんか?

実は、ムスリム観光客が重視しているのは食以外の部分にも多くあったりします。今回は、訪日経験のあるムスリム観光客数名にフードダイバーシティ株式会社がインタビューを実施し、彼らが語る「選ばれる飲食店」「避けたい飲食店」のポイントから、対応の本質に迫ります。

インタビュー①

Aさん(マレーシア出身・30代男性)

「日本の食は大好き。でも、一番不安なのは“何が入っているか分からないこと”」

彼が「また行きたい」と感じたのは、ある東京の小さな定食屋。
その理由は「英語で原材料や調理方法を丁寧に説明してくれた」から。

「とにかく包み隠さず正直に教えてくれた。とても信頼できました」

インタビュー②

Bさん(インドネシア出身・20代女性)

「お店から“うちはハラール認証がないから提供できない”と言われたけど、私はそこまで求めてない」

自国でもハラール認証のないお店は多いし、重要なのは「配慮があることが見えるかどうか」。
「Aは難しいけど、Bはできる」といった提案など、柔軟な対応が嬉しいという。

「“これは食べられますか?”と聞いたとき、面倒くさそうな顔をされたら、それだけで“もういいや”ってなる」

インタビュー③

Cさん(UAE出身・40代女性/家族旅行)

「料理そのものより、“家族で安心して食事できる空間かどうか”を重視しています」

Cさんは、家族4人で初めて日本を訪れた際に、新宿のレストランで対応は完璧でも気まずさ”を感じたという。

「ハラール対応している旨の表記があり安心して入店しましたが、周囲の席からの視線や、スタッフの緊張感が伝わってきて…。歓迎されていないのかな?と感じてしまいました」

その後、訪れた京都の小さなカフェでは、英語の手書き案内と、スタッフの自然な笑顔に感動したそうです。

「『何か不安なことがあれば教えてくださいね』と優しく言ってくれた店員さんが印象的でした。完璧な設備はなくても、“歓迎されている”と感じられたお店にはまた行きたいと思います」

ムスリム観光客が“選ぶ”飲食店の共通点

好印象の店に共通していること 理由
原材料や調理工程を開示 安心できる&自分で判断ができる
店員が親切・配慮ある コミュニケーションの安心
ハラール、ムスリムフレンドリーといった表記がある あると安心材料に

一方、「避けたい」と思われる店は?

  • 質問しても「わかりません」「たぶん大丈夫」と曖昧な返事

  • 「うちはハラールじゃないので無理」とお店側が判断する

  • 英語表記などが一切なく、判断できない

  • 豚やアルコールに対する理解がない(例:豚を抜いてといったがベーコンが入っていた/アルコール使用の料理に無自覚)

上記のように「無関心」に見える態度や「曖昧な対応」が、大切なお客様との信頼関係を遠ざけてしまいます。まずは「知ろうとすること」が、フードダイバーシティ対応の第一歩としてとても重要であることが分かります。

まとめ:大切なのは「信頼と安心」

多くの飲食店は「メニューや原材料の管理」に注力しようとします。もちろんそこも重要なのですが、顧客満足度の大部分を占めるのは「人の対応」や「雰囲気」であることが今回のインタビューで明らかとなりました。

  • 「質問しづらい空気」

  • 「店員が戸惑っている」

  • 「明らかに歓迎されていないムード」

これらは無意識のうちにお客様へ伝わり、「もういいか…」という判断につながります。

ムスリムの旅行者全員が全員100点満点の対応を求めているわけではないので、できる限りの配慮を行う姿勢があること
不安に思う点を質問できる雰囲気があること
誠実に対応しようとする姿勢があること

…これらが揃っていれば、“また来たい店”になることが可能です。