商品開発でしっかりと考えたいこと

ヴィーガン、プラントベース食品の開発現場や試食会で、よくこんな声を耳にします。

「これ、言われないと分からないくらい肉っぽいね!」
「まるで本物のチーズみたい!」

この言葉、開発者にとっては褒め言葉に聞こえます。しかし──本当にそれがゴールなのでしょうか?

「本物っぽい」だけでは限界がある

「言われないと分からない」という評価は、評価軸が “常に本物と比べられている” ということです。つまり、どれだけ技術が進化しても、「本物そっくり」=“2番手の立場” にとどまってしまう可能性があります。

苦戦例:大手ファストフードの代替肉バーガー

数年前に、さまざまな大手ファストフードチェーンが代替肉を使用した商品を販売しましたが、結果は大苦戦し、現在はほぼ撤退。

  • 最初は話題性があった(SNSでも“食べてみた”投稿が拡散)

  • 「言われないと分からない」という評価はあったものの、リピート率が悪かった

  • 地球温暖化、健康などのブランディングが強く「特別商品」感があった

豆腐が何百年も続いている理由

ここで、豆腐のことを思い出してみましょう。

  • 日本や東アジアで1,000年以上食べ続けられてきた食材で、今や世界中に流通している

  • 長くタンパク源として食べられてきた

  • ベジタリアン・ヴィーガンかどうかに関係なく誰もが食べている

なぜ、豆腐はこれほど長く続いてきたのでしょうか?

それは、豆腐が「肉の代わりだから食べられている」のではなく、「豆腐という食べ物としておいしい」からです。

自由が丘「菜道」が証明すること

東京・自由が丘のヴィーガンレストラン 「菜道(さいどう)」 は、2019年に世界的レストラン検索サイト「Happy Cow」で世界1位にも輝いた名店ですが、来店するお客様の半分以上はベジタリアンでもヴィーガンでもないとのことです。

来店するお客様の目的はシンプル。

「美味しい料理を食べたい」

つまり、「菜道」には“代替”や“本物と似てる”を求めてくるお客様は少ないということです。

ゴールを「本物そっくり」にすると

  1. 本物と比較される評価軸なので、どれだけ頑張っても“2番目”で終わる可能性が高い

  2. 少しの違和感が「買わない理由」になりやすい

  3. 食べる側も“これは代替品”という頭から抜け出せない

まとめ

「言われないと分からない」は、技術力の証明としては素晴らしいと思います。でも、それをゴールにしてしまうと、ヴィーガン、プラントベース食品はいつまでも「本物の代わり」という立ち位置から抜け出せません。

「本物そっくり」ではなく「これが好きだから食べる」世界観。

それが、ヴィーガン、プラントベース食品が日常に根づくためには必要なのだと思います。