GMTI 2026(Global Muslim Travel Index 2026)要約
2026年6月、MastercardとCrescentRatingより「Global Muslim Travel Index(GMTI)2026」が発表されました。
GMTIは、世界のムスリム旅行市場の動向や各国・地域の受入環境を評価する国際的な指標として、多くの観光関係者から注目されています。
今回のレポートでは、ムスリム旅行市場が引き続き成長を続けていることに加え、AIの普及による旅行者の行動変化や、女性旅行者・スポーツツーリズムの重要性など、今後の観光戦略を考える上で参考になる内容が数多く紹介されています。
本記事では、GMTI 2026の内容をもとに、世界の動向と日本に求められる取り組みについて整理してみたいと思います。
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GMTIとは
GMTI(Global Muslim Travel Index)は、ムスリム旅行者にとって旅行しやすい環境が整っているかを評価する国際的な指標です。
単にハラールに対応した施設の数を比較するものではなく、
- アクセス
- コミュニケーション
- 環境
- サービス
など、旅行全体の体験を幅広く評価しています。
近年はデジタル化や旅行者との信頼関係なども評価対象に加わり、「旅行者が安心して選べる環境が整っているか」がより重視されるようになっています。
世界のムスリム旅行市場は引き続き拡大

利用者80%のAI時代に重要になる「見つけてもらう力」
今回のGMTIで特に印象的だったのが、AIと観光の関係です。
GMTI 2026によると、旅行者の80%が旅行目的でAIツールを利用しており、旅行先やレストラン選びにおいてもAIの活用が広がっていることが紹介されています。そのため、今後は旅行者自身が検索して情報を探すだけでなく、AIから提案を受けながら旅程を組み立てるケースが増えていくと予想されます。
一方で、ハラール対応や礼拝スペースなどの受入環境が整っていても、その情報がGoogle MapやWebサイト、SNSなどで十分に発信されていなければ、AIに認識されず旅行者へ届きにくくなる可能性があります。
もちろん、まずは受入環境を整えることが前提ですが、GMTI 2026は、それに加えて「どのように情報を発信するか」の重要性も示しています。これからは「対応すること」だけでなく、「見つけてもらえること」も、観光地や事業者に求められる要素の一つになっていきます。

ハラール認証の重要性にも変化
GMTI 2026を読む限り、評価の中心は
- 情報の透明性
- 信頼性
- デジタル上での可視性
- 安心して利用できる環境
へと広がっています。
実際にレポート全体を通じて強調されているのは、「どのような対応をしているのかを分かりやすく伝えること」です。ハラール認証は手段の一つですが、それだけで旅行者に選ばれる時代ではなくなってきています。

女性旅行者の存在感が高まる
GMTI 2026では、ムスリム女性旅行者に焦点を当てた「Muslim Women in Travel 2026」も紹介されています。
レポートによると、ムスリム女性旅行者は約9,000万人規模で、世界のムスリム旅行者全体の48%を占めている。若い世代が多く、旅行先の選択や消費行動に大きな影響を与える存在となっています。
また、旅行先の情報収集にはSNSが大きな役割を果たしており、Instagram(40%)、YouTube(25%)、TikTok(23%)が主要な情報源となっています。
旅行先に求める要素としては、
- プライバシーの確保
- 礼拝や家族向け設備などの基本的なサービス
- 差別などを受けないこと
- 同じ価値観を持つ人とのローカルコミュニティ
- 安全性
などが挙げられています。

また、Muslim Women Friendly Destinationsランキングの上位にはマレーシアやシンガポールに加え、日本、韓国、台湾など治安が良く、女性が安心して旅行できる国が並んでいます。
日本は非OIC国で6位にランクインしており、治安や公共交通機関の利便性などが評価されていると考えられます。一方で、シンガポールや香港と比べると、ムスリム向け情報発信や受入環境の見える化には改善の余地があると言えるでしょう。
つまり、ムスリム女性旅行者の誘客には、「食」だけでなく「安心して旅行できる環境」を伝えることも重要であることが示されています。

Muslim Women Friendly Destinations
スポーツツーリズム市場にも注目
もう一つ注目されているのがスポーツツーリズムです。
GMTI 2026によると、ムスリム向けスポーツツーリズム市場は2030年までに210億ドル規模へ拡大すると予測されています。特に若いデジタルネイティブ世代を中心に、サッカー、クリケット、バスケットボールなどのスポーツイベントを目的とした旅行需要が高まっており、今後の成長が期待されています。
「Proof Wins(証明が勝つ)」
ただし、スポーツファンの熱意だけでは予約にはつながらず、食事や礼拝に関する配慮が不明確な場合、旅行者は予約をためらいます。
旅行者は、
- ハラールフードがあるのか
- 礼拝場所があるのか
- どのような配慮があるのか
といった情報について、信頼できる形で事前に確認できたときに初めて予約するとされています。
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GMTIランキング2026から見える世界の動向
① 東南アジアが圧倒的に強い
上位を見ると
- マレーシア(1位)
- インドネシア(2位)
- シンガポール(Non-OIC 1位)
が依然として強い。
これらの国は
- ムスリム人口が多い
- ハラール対応が日常に組み込まれている
- 英語が通じやすい
- 観光インフラが整備されている
という共通点があります。
② 中東諸国が復調
前年から見ると
- バーレーン +5
- イラン +2
- ウズベキスタン +3
などが伸びています。
一方、
- UAE -4
- ヨルダン -2
- モロッコ -2
など停滞・後退した国もあります。
以前は「中東=圧倒的上位」でしたが、現在は観光インフラやデジタル情報発信の質が評価を左右する時代になっています。
③ 非OIC諸国の競争が激化
Non-OICランキングを見ると
- シンガポール
- 香港
- 台湾
- 日本
- 韓国
- タイ
- フィリピン
などアジア勢が目立ちます。
特に
- フィリピン +5
- 日本 +7
- 韓国 +5
と伸びています。
④ ヨーロッパ勢は苦戦
- イギリス -1
- ボスニア -5
- アイルランド -10
- ジョージア -7
など下落が目立ちます。
絶対的なサービス水準が下がったというより、アジア諸国の伸びが速すぎると見るべきでしょう。

日本の評価と、今後求められること
GMTI 2026における日本への評価は、以下となります。
- 2016年のGMTI掲載以来、9年以上にわたり非OIC(イスラム協力機構非加盟国)部門で高評価を得ている
- 東京・大阪・京都などでムスリム向けガイドやデジタルマップを整備している
- ハラール対応レストランや礼拝施設のネットワークが拡大している
- ハラール対応和食の普及が進んでいる
- 地域事業者の受入能力が向上している
- 四季や日本文化といった観光資源に加え、受入環境の整備が進んでいる
- 世界のムスリム旅行市場において「包括的(inclusive)で魅力的な旅行先」と評価されている
GMTI 2026を見る限り、日本は既にムスリム旅行者から一定の評価を得ている国と言えます。
日本は四季や文化、治安、食といった世界的に魅力の高い観光資源を持っています。今後は受入環境の整備を継続しながら、それらの魅力を適切に発信し、「誰もが安心して旅行できる国」としての認知をさらに高めていくことが重要になってきます。