ヴィーガン認証を取得すべきかどうか
昨今、弊社ではさまざまな企業様より「ヴィーガン認証の取得」に関してご相談をいただきます。
一見ヴィーガン認証を取得することは、企業様にとって魅力的に見えるかもしれませんが、弊社では取得前にその効果と取り扱いについてしっかりと考えることが重要だとお伝えしております。本記事では、その詳細についてまとめたいと思います。
尚、本記事はヴィーガン認証の取得を肯定も否定もするものではなく、事実に基づき中立的な立場での見解を示します。
1. ヴィーガン認証機関は多数存在し、誰でも許認可なく認証機関になることができます
まず、日本においてヴィーガン認証は認証機関が複数存在しています。認証の基準もそれぞれで異なり、現地審査も基本なく、性善説を基に書類を提出してお金を払えば取得することができるものです。
ヴィーガン認証機関は誰でも許認可もなく簡単に参入できて、且つ利益率が高いことから昨今参入する会社が日々増えているのが現状です。
そのような状況なので「どのヴィーガン認証機関が適切でしょうか?」という質問には基本的にお答えするのがとても難しいです。
2. ヴィーガン認証に法的な根拠はない
上記のようにヴィーガン認証は簡単に発行できる状況ですので、当然ですが法的な根拠はありません。一般の食品会社が取得するISOやHACCPなどとは本質的にここが異なります。
よく食品メーカー様から「なにかしらのヴィーガン認証を取得しないと、対外的に”ヴィーガン”と謳えないのではないか」という相談を頂きますが、そのようなことは全くありません。逆にいうと、自社の商品がヴィーガンだと思えば、ヴィーガンと表記して全く問題ありませんし、実際にそのように対応している企業様はたくさんあります。
尚、日本農林規格として「ベジタリアン又はヴィーガンに適した加工食品」というものが2022年に掲載されていますが、こちらも下記に問い合わせをすると「遵守するかは任意のものです」と回答がありました。
【問い合わせ先】
農林水産省
新事業・食品産業部食品製造課基準認証室
担当者:規格専門官
代表:03-3502-8111
3. ヴィーガン認証が場合によっては足枷になる可能性がある
ヴィーガン認証を取得して商品にそのマークを大きく貼ったり、食品問屋に「ヴィーガン認証商品です」といった説明を行うと、消費者や食品問屋に「ヴィーガンの方向けの専用商品」と認識される可能性があります。
ヴィーガン認証取得後は売り方がとても重要になってくるのですが、弊社では「ヴィーガンの方にどう売るか」よりも「ヴィーガンでない方にどう違和感なく売るか」をしっかりと考えるべきだと思っております。
参考:ベジタリアン○○、ヴィーガン○○、大豆ミートの○○は見直しませんか?
4. プラントベースという選択肢
1と2の事実をお伝えして、それでも「なんとなく不安です」という事業者様がいらっしゃいます。その場合は「プラントベース」という表記を行うのも一つの選択肢だとお伝えしております。
例えば、スターバックス様や、サンリオピューロランド様では「プラントベース」という表記を使っています。ヴィーガンは多少なりとも思想や考え方も含む言葉ですが、一方でプラントベースは単なる「仕様(スペック)」を示す言葉で、こちらを使う企業様も昨今増えてきています。
そしてプラントベースに関してのマークも自社で作成し、さらにポリシーをしっかりと作って消費者に情報提供していることが注目すべき点です。
ただし注意したいのは、日本の消費者庁は「プラントベース」を下記のように定義しており、日本政府の見解では「動物由来のものを含んでいてもプラントベースを謳っていい」ということになっていますので、しっかりと確認することが必要です。
https://www.caa.go.jp/notice/other/plant_based/#q1
ヴィーガン認証を取得することがそれぞれの企業にとって適切かどうかを判断する際には、上記の4つのポイントを考慮し、企業は自社の製品やブランド価値、および消費者のニーズに基づいて、適切な戦略を選択する必要があると考えています。