「AIからどう見えているのか」を把握する重要性

ヴィーガン、ハラール、グルテンフリーなど、食の多様性への対応を地域で進める際、「対応店舗を増やす」「対応店舗のリストを作る」「MAPを作る」といった取り組みは非常に重要です。

しかし、旅行者の情報収集方法が変わりつつある今、もう一つ確認しておきたいことがあります。

「AIに聞いたとき、自分たちの地域の対応店舗は何店舗出てくるのか?」

という視点です。

旅行者が「AIに聞く」は、すでに現実の行動に

JTB総合研究所が2025年に発表した「生成AIの利用と旅行についての調査」では、生成AIを週1回以上利用する人の77.8%が、旅行に関連して生成AIを利用した経験があると回答しています。

さらに、今後旅行で生成AIを利用してみたい用途として、「旅行の行程作成・ルート提案」「交通手段の検索・予約」とともに、「旅行先のグルメ情報検索」が上位に挙がっています。また、JTB総合研究所の別の2025年調査でも、旅先で利用してみたいAIサービスの1位は「旅行先のグルメ情報検索」29.6%でした。

海外でも同じ動きが見られます。

Booking.comが2025年に33市場・37,325人を対象に行った調査では、世界の回答者の67%が旅行のいずれかの場面ですでにAIを利用。旅行計画時の用途では、36%が「レストランのおすすめ」にAIを利用していました。日本の回答者に限ると、この項目は38%です。

つまり、

  • 「〇〇市でヴィーガン対応できるお店は?」
  • 「〇〇駅周辺でハラール対応できるレストランは?」
  • 「〇〇市でグルテンフリーの夕食を食べるならどこ?」

といった質問をAIに投げかけて、旅行先の飲食店を探す行動は、すでに始まっています。

MAPやリストに10店舗あっても、AIが10店舗答えるとは限らない

ここが、これから地域として確認しておきたいポイントです。

例えば、地域内にヴィーガン対応店が10店舗あり、その10店舗を掲載したMAPを作ったとします。

しかし、「〇〇市でヴィーガン対応できる店は?」とAIに質問したとき、その10店舗すべてが出てくるとは限りません。3店舗しか出てこないかもしれません。または、地域として積極的に紹介したい店舗が出ず、別の店舗が紹介される可能性もあります。

「対応店MAPを作ったから終わり」ではなく、「旅行者からどう見えているのか」まで確認することが重要です。

まず、自分たちの地域をAIに聞いてみる

特別なシステムを導入する必要はありません。

まずは旅行者になったつもりで、普段使っている生成AIに質問してみてください。

「〇〇市でヴィーガン対応できる店は?」

そして、回答を確認します。

何店舗出てくるでしょうか。

さらに、

  • 「〇〇市でハラール対応できる飲食店を教えて」
  • 「〇〇駅周辺でグルテンフリー対応できるレストランは?」
  • 「ヴィーガンの外国人旅行者が〇〇市で夕食を食べるならどこがおすすめ?」

など、質問の仕方を変えてみることも重要です。その際に確認したいのは、単純な店舗数だけではありません。

地域として把握している対応店が出てくるか。店舗情報は正しいか。閉店した店舗が紹介されていないか。対応内容が正しく説明されているか。地域として紹介したい店舗が選択肢に入っているか。

こうした確認を行うことで、地域のフードダイバーシティ対応が「AIからどう見えているのか」を把握できます。

Google検索そのものもAI化している

この変化は、ChatGPTなどの生成AIだけの話でもありません。

Googleは検索にAI機能を組み込み、AI Modeについて、地域のおすすめを探したり、旅行を計画したりといった複雑な質問に活用できると説明しています。日本語での提供も開始されています。

Googleは旅行分野でも、AIを使って旅程を作成し、その中でレストランなどを提案する機能を展開しています。

つまり、これまでのように、「Googleで検索して、検索結果からWebサイトを一つずつ見る」だけではなく、「AIに条件を伝えて、候補をまとめて提案してもらう」という情報探索が広がっているということです。

食事制限を持つ旅行者との相性も非常に高いと考えられます。

「レストランを教えて」だけではなく、「〇〇駅の近くで、ヴィーガン対応ができて、夜20時以降も利用できる店を教えて」といった、複数の条件をまとめて質問できるからです。

「対応している」から「見つけてもらえる」まで

これまで地域のフードダイバーシティ対応では、

① 対応できる店舗を増やす

② 対応店舗をリスト化する

③ MAPを作る

④ WebサイトやSNSなどで情報を発信する

といった取り組みが行われてきました。

もちろん、これらは今後も重要です。しかし、旅行者の情報収集にAIが入ってくるのであれば、その先に、

⑤ AIに聞いて、実際にどの店舗が出てくるのか確認する

という工程も加えていく必要があります。そして、これは一度確認して終わりではありません。店舗の閉店、新規対応店の増加、メニュー変更など、地域の状況は常に変わります。AIの回答も固定されているわけではありません。

だからこそ、定期的に旅行者と同じ質問をして、「今、自分たちの地域はどう回答されているのか」をチェックすることが重要です。

あなたの地域では何店舗出てきますか?

地域でヴィーガン対応店を10店舗作った。

MAPにも10店舗掲載した。

Webサイトでも紹介した。

そこで終わるのではなく、ぜひ最後にAIへ聞いてみてください。

「〇〇市でヴィーガン対応できる店は?」

10店舗出てくるでしょうか。

5店舗でしょうか。

それとも、ほとんど出てこないでしょうか。

これから重要になるのは、「対応できる店がある」ことだけではなく、「その店を必要としている旅行者が、普段使っている情報経路から見つけられる」ことです。

MAPを作る。

対応店リストを作る。

Webで発信する。

そして、AIに聞いて確認する。

旅行者がAIに聞く時代だからこそ、地域のフードダイバーシティ対応も、「整備したか」だけではなく「見つけてもらえているか」まで確認する段階に来ています。