菜道の楠本シェフが語るガストロノミーとは
2025年10月30日(木)、東京都主催の「ムスリム・ベジタリアン等、多様な文化・習慣を持つ外国人旅行者受入セミナー」第4弾が開催され、世界一評価の高いヴィーガンレストラン「菜道」の楠本シェフが「世界が注目するヴィーガンガストロノミー 〜LAでキャンセル待ち2500名の事例〜」をテーマに講演を行いました。
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プログラム
「世界が注目するヴィーガンガストロノミー〜LAでキャンセル待ち2500名の事例〜」
講師:楠本 勝三氏(菜道シェフ、東京都観光大使)
モデレーター:守護 彰浩(フードダイバーシティ株式会社 代表取締役)
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ウェビナーの様子
当日は、菜道(東京・自由が丘)の楠本勝三シェフを講師に、フードダイバーシティ株式会社の守護がモデレーターを務めました。ウェビナーのタイトルは「世界が注目するヴィーガンガストロノミー〜LAでキャンセル待ち2,500名の事例〜」。楠本氏の料理人としての歩みから、世界的な人気を得るまでの経緯に加え、日々お客様とどう向き合っているのかという実践に根ざしたお話を伺うことができました。

冒頭、楠本氏は「海外ではラーメンは和食として広く認知されている」と指摘しました。LAでのイベントのコース料理でメインにラーメンを据えた理由として、「ラーメンの本場は日本であり、和食の代表的アイコンとして期待値が高いから」と説明。日本発であること自体がストーリーとなり、体験価値を押し上げると述べました。
続いて、“完食できる設計”の重要性が語られました。例えば、豚骨のようなコクや風味をヴィーガンでどう再現するか、そのためにどの食材をどう組み合わせるか、といった具体論です。日本には乾物や豆類、きのこ類など、狙うニュアンスに合わせて選べる素材が豊富にあり、適切に設計すれば動物性を使わずとも満足度の高い一杯に仕上げられると強調しました。
特に「作りたいものから逆算して考える」というアプローチは示唆に富みます。楠本氏は10種類以上の乾燥きのこを使い分け、旨味や香りの立ち上がりまで調整。出汁、乳化、香り入れ、油脂の管理といった工程を通じて、飲み切りたくなるスープを作っていると述べました。

日本の食材の実力についても具体例が示されました。「道の駅は宝の山。添加物の少ない良質な食材が数多く揃い、海外ではサステナブルだと高く評価される。活用しない手はない」とし、糖度18度のとうもろこしを活かしたスープや、味の層に関する手法を紹介。甘味や粘り、香りの設計について共有されました。
最後に、若手料理人へのメッセージとして「フードダイバーシティを理解し、実践できる日本人料理人は海外で非常に貴重な存在。国内でも厨房の即戦力になり得る。今のうちに学び、現場で試すべきだ」と締めくくりました。