フードダイバーシティ対応の最前線とは

2025年8月5日、訪日ラボ主催のインバウンド業界最大級のカンファレンス「THE INBOUND DAY 2025」にて、座談会「プロが語る!発信×受入本音トークLIVE」が開催され、100名上が参加致しました。本座談会には、フードダイバーシティ株式会社代表の守護が登壇し、インバウンドに関わるさまざまな課題とチャンスを語りました。

守護が語ったこと

1. 都市圏と地方の格差:東京・大阪・京都は激戦区、それ以外はまだ余白がある

ヴィーガンやハラール対応が進んでいる都市では競争が激化している一方、地方では対応施設がまだ少なく、日本全体としての必要性が高まっていると指摘しました。

2. 「食べられるもの」ではなく「食べたいもの」を提供する心構え

単に食べ物を提供できるだけでは不十分で、旅行者が本当に「食べたい」と感じる体験と味覚の提供が不可欠だと強調しました。

3. 団体ツアー対応では「1人」の対応者でも機会を逃さない

フードダイバーシティ対応が必要なのは団体内のたった1人であり、その1人に対応できれば、団体全体を取りこぼさず受け入れ可能だと説明しました。しかし、対応を怠ると団体全体の受け入れ機会を失うリスクがあることも示唆しました。

4. 客視点での対応が不可欠:「言われたら対応する」は提供者目線

言われたら対応する」という姿勢はお客様目線ではないと断じ、予測と準備に基づいた能動的な対応こそが求められていると述べました。

示唆と提言

  1. 地方での対応強化が先行チャンス
     地方自治体や観光事業者は早めにフードダイバーシティ対応を整備し、他地域との差別化を図るべき。

  2. メニュー開発の戦略転換
     単なる対応可能メニューではなく、旅行者が本当に「食べたい」と思うクオリティと体験を追求すべき。

  3. 団体向け受け入れフローの整備
     団体全体をしっかりと受け入れられる体制整備が重要。機会損失を避ける体制づくりを。

  4. 自発的対応姿勢を共有する文化の醸成
     社員教育や店舗運営の仕組みとして、「言われる前に動く」プロアクティブな姿勢を組織に根付かせる必要あり。

まとめ

セッションを通じて浮き彫りになったのは、インバウンド対応が単なる「選択肢の拡充」ではなく、企業や地域が「戦略的に選ばれるための差別化手段」であるということです。つまり、「対応しているかどうか」ではなく、「どこまで本気で対応し、どのように伝えているか」が今後の評価軸になるという明確な潮流です。

特に地方においては、まだ競合が少ない今だからこそ、フードダイバーシティ対応を先んじて導入することで、地域としてのブランド価値を高め、選ばれる理由を作ることができる貴重なタイミングです。例えば、「〇〇県といえば、ハラール和食が安心して楽しめる」「〇〇市ならヴィーガン対応の郷土料理がある」といった具体的なイメージは、これからの観光誘致において非常に強力な武器となります。

そして何よりも大切なのは、旅行者一人ひとりの目線に立ち、「とりあえず食べられるもの」ではなく、「その土地ならではの、食べたいと思える魅力的な料理体験」を提供することです。これが旅行全体の満足度を左右し、SNSや口コミを通じた二次的な拡散にもつながります。

今後、観光産業においては「施設の数」や「価格の安さ」だけではなく、どれだけ多様な文化背景に配慮し、心から歓迎しているかが、来訪者の意思決定に大きく影響する時代がやってくることでしょう。