違いではなく「背景」に目を向ける思考法

ある日、子どもがぽつりと「なんで○○くんはお肉を食べないの?」と聞いてきたとしたら——あなたはどう答えますか?

この記事では、「なぜ肉を食べない人がいるのか?」をきっかけに、違いを尊重するだけでなく、背景に目を向ける思考法を紹介します。

肉を食べない理由はひとつじゃない

肉を食べない、という行動の理由には大きく4つの背景があります。

① 宗教的な理由

  • ヒンドゥー教:牛肉を避ける人が多い

  • イスラム教(ハラール):豚肉、然るべき屠殺方法の肉以外は避ける

  • 仏教圏の一部:殺生を避けるため、肉を摂らない

② 健康・医療上の理由

  • 消化器疾患やアレルギーで動物性食品を控える人も

  • 医師の指導で植物性中心の食生活にするケース

③ 環境・動物倫理への配慮

  • 動物福祉、動物愛護

  • 食品ロスや気候変動への意識が高まる中、選択する方も増加中

④ 文化・家族背景

  • 子どもの頃から肉を食べない家庭で育った

  • 特定の国や地域では、もともと動物性食品が少ない食文化も

「ちがう」ではなく「理由がある」と考える

「なんで?」と聞くこと自体は悪いことではありません。大切なのは、「自分とはちがう」と感じた瞬間に、“背景がある”と想像できるかどうかです。

これは、フードダイバーシティに限らず、あらゆる場面で役立つ思考力です。

たとえば、こう考えてみよう:

  • ✘「肉が嫌いなんだ」→ ✔「宗教や考え方が違うのかも」

  • ✘「偏食かな」→ ✔「健康上の理由かもしれない」

  • ✘「なんか変わってる」→ ✔「自分と違う文化に育ったんだな」

背景を想像することで、無用な偏見や誤解を減らすことができます

「一緒に食べられるもの」を見つけるのがダイバーシティのコツ

フードダイバーシティは「誰かの食の制限を我慢して受け入れる」ことではありません。むしろ、「みんなが楽しめる選択肢を探すこと」がその本質です。

たとえば

  • 野菜カレーを一緒に食べる

  • 魚料理を選ぶ

  • メニューの幅が広いお店を選ぶ

共通点を探す視点を持てば、「一緒に楽しめる」場面がぐっと増えます。

子どもにも教えたい「背景に気づく力」

親子の会話の中で、「なんで○○くんはこれ食べないの?」という疑問が出たときこそチャンス。答えを押しつけずに、こんな問いかけをしてみてください。

「うーん、何か理由があるのかもね。どんな理由が考えられるかな?」

こうした”考える練習”を積み重ねることで、子どもはやがて、「ちがい」ではなく「人の背景」を自然と尊重できるようになります。

See Also

子どもにも伝える「食の多様性」――フードダイバーシティを家庭で実践

まとめ:違いを知る→背景を考える→共通点を見つける

ステップ 内容
Step 1 「ちがい」に気づく(例:肉を食べない)
Step 2 背景を想像する(宗教?健康?価値観?)
Step 3 共通点を探す(何を一緒に楽しめる?)

食を通じて人の背景を考える力は、異文化理解・国際交流・ビジネス・教育など、さまざまな場面で役立ちます。食卓でのちょっとした会話が、グローバル時代に必要な共感力や思考力の“原点”になるのです。

見えない背景に敬意を持つ社会へ

「食べない」「避ける」という選択には、一見すると些細に見えるかもしれませんが、その背後には、その人自身の大切な価値観や信念、家族の習慣、宗教的な背景、あるいは過去の経験や痛みが深く関わっていることがあります。

一般的には「多数派」の感覚を基準にしてしまいがちです。しかし、これからの共生社会では、その前提を一度手放し、「なぜその選択に至ったのか?」という背景に思いを巡らせる姿勢が求められます。

一緒に食卓を囲むとき、その「選ばない」「避ける」行動の奥にある物語に、少しだけ思いをはせてみるのはいかがでしょうか。きっと、その先にあるのは「違い」ではなく、人と人との新たなつながりの可能性です。