旅行代理店に選ばれるためにすべきこと
インバウンド需要が拡大する中、訪日旅行の満足度を左右する大きな要素のひとつが「食体験」です。なかでも近年注目されているのが、フードダイバーシティ(食の多様性)への対応です。宗教・文化的背景や健康志向、アレルギーなどに配慮した食事の選択肢は、訪日客にとって「安心して食事を楽しめるかどうか」の重要な指標となっています。
実際に旅行代理店が造成する団体ツアーの中には、フードダイバーシティ対応を必要とする人が必ずといっていいほど含まれています。しかし、そうした方のために別のお店を個別に手配することは、旅行代理店にとって時間・コスト・運営上の観点から非常に難しいのが実情です。
そのため、フードダイバーシティに対応しない飲食店は、団体全体の食事先として候補から外れてしまう=団体をまるごと逃してしまうというケースが起こり得ます。
今回は、旅行代理店に“選ばれる飲食店”になるために重要な、5つのチェックポイントをご紹介します。これらのポイントをおさえることで、インバウンド対応力の強化につながり、より多くの訪日客をお迎えするチャンスが広がります。

1. 「うちは言われたら対応しますよ」ではなく、「できます」と明確に伝えているか
旅行代理店が求めているのは、「言われたら対応しますよ」というスタンスのお店ではありません。「フードダイバーシティ対応を行っています」と事前に明確に宣言し、具体的な情報を発信しているお店です。
なぜなら、「言われたら対応します」という曖昧な姿勢には、多くの不安が伴うからです。たとえば、対応内容がスタッフ全員に共有されているのか、実際にどのレベルまで対応できるのか、忙しい時間帯でも対応がブレずに提供できるのか──そのすべてが不透明なままでは、旅行代理店としても安心してお客様を送り出すことができません。
旅行代理店側は、「万が一」が起きないように細心の注意を払っており、食事のトラブルは避けたいリスクのひとつです。「言われれば対応する」といった受け身の姿勢よりも、あらかじめ対応方針を明示し、事例やメニューを示してくれる飲食店の方が、はるかに信頼され、選ばれやすいのです。
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自社ホームページやSNSで対応可能な内容を記載
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メニューにピクトグラムや対応食種別の明記
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多言語での案内資料(PDFやリンク)も好印象
旅行会社にとっては「連れて行ってトラブルがないか」が最重要。事前情報の明示がその信頼になります。
2. メニューに画像と価格が明確に記載されているか
ヴィーガンやハラールなどの特別メニューでは、写真や価格が掲載されていないケースが多く、これが旅行代理店にとって大きな不安要素になっています。
料理の見た目やボリュームがわからなければ、お客様に説明ができず、期待とのギャップが生じる可能性があります。また、価格が不明だと見積もりや予算管理が難しく、手配自体を断念せざるを得ないこともあります。
たとえ対応していても、情報が“見える化”されていなければ選ばれにくいのが現実です。写真・説明・価格を明確にしておくことで、旅行代理店の安心感と信頼につながり、送客のチャンスが大きく広がります。
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料理の画像がある
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税・サービス料込み価格を明記
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特別メニューの価格や制限もはっきりと記載
旅行代理店は「どんなメニューが出てくるかわからない」「料金が不明確な店」は選びません。明確な情報は提案力に直結します。
3. 対応メニューの“グレード”が一般メニューと同等か
「ヴィーガンやハラールだから、質素でも仕方ない」という考え方のお店に、旅行代理店は送客できません。
旅行代理店が懸念するのは、対応メニューの“見劣り”です。見た目・味・ボリュームが明らかに他の料理より劣っていると、その旅行者だけが我慢を強いられる形になり、満足度が下がります。
特に団体旅行では、一人の不満が全体の印象に影響し、クレームにつながるリスクもあります。フードダイバーシティ対応とは、制限に合わせるだけでなく、他と同等に満足できる食体験を提供することが求められているのです。
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料理のグレード感、演出、盛り付けが他と同じ
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ボリュームが少なすぎない
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限定的な選択肢ではなく、複数から選べる構成
“どんな人にも満足してもらえる”対応力が、旅行代理店の選定基準です。
4. アレルギーなどへの対応でも“面倒くさい”雰囲気を出さない
「アレルギー対応とか、めんどくさいんですよね。」
たった一度でも、そんな言葉が聞こえてしまったら、旅行代理店はそのお店を二度と選びません。
旅行代理店にとって、お客様の安心・安全は最優先事項です。特にアレルギー対応は、間違いが命に関わることもある重大なテーマ。そこに対して“面倒”という姿勢が見えた瞬間、代理店は「このお店には大切なお客様を預けられない」と判断します。
どれだけ味が良くても、立地が便利でも、お客様への配慮が欠けていると感じた時点で信頼関係は崩れます。一度失った信頼は、取り戻すのが非常に難しいのが旅行業界の現実です。
「丁寧に対応します」という姿勢そのものが、旅行代理店にとって最大の安心材料であり、送客の前提条件となっているのです。
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アレルギーや制限食の対応範囲が明示されている
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予約時に聞き取りができる体制
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現場スタッフが対応方法やオペレーションを理解している
大切なのは「できること」「できないこと」を丁寧に伝え、誠実に対応する姿勢。旅行会社はその“空気感”を見ています。
5. 礼拝・トイレなどへの柔軟な理解と対応があるか
一般のお客様にとってトイレの清潔さや設備は、お店選びの大切なポイントになります。そして、ムスリムのお客様にとっては、それと同じくらい礼拝のためのスペースや配慮が重要視されます。
もちろん、すべての設備が完璧に整っている必要はありません。専用の礼拝室がなくても、静かに使えるスペースを確保したり、礼拝マットや水の利用について説明できたりするだけでも、「理解しようとしている」と伝わります。
旅行代理店が評価するのは、そうした“できる範囲で対応しよう”という配慮ある姿勢です。お客様の文化や習慣に寄り添おうとする心遣いがあるかどうかは、設備以上に重視されます。
結果的にその姿勢が、旅行代理店との信頼関係や継続的な送客につながるのです。完璧ではなくても、伝えようとすること・対応しようとする姿勢が、何より大切です。
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礼拝スペースの用意(空きスペースや静かな部屋でも可)
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トイレに温水洗浄便座や洗面器がある、または案内できる
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多文化に対するスタッフの理解や配慮がある
施設的な“完璧さ”より、“柔軟な対応姿勢”が鍵となります。
まとめ:旅行代理店が選ぶのは、“準備があるお店”
旅行代理店に選ばれるには、「頼まれたら対応します」ではなく、「あらかじめ準備しています」という店であること。顧客の食文化や体調、信仰をあたりまえに配慮する”ことができる店が、これからのインバウンド時代に選ばれます。
🔖 旅行代理店向けチェックリスト
| チェック項目 | 達成状況 |
|---|---|
| 対応可能な食文化(ヴィーガン・ハラールなど)を事前告知している | ✅ / ❌ |
| メニューに料理画像と価格が明記されている | ✅ / ❌ |
| 対応メニューのクオリティが他と同等 | ✅ / ❌ |
| アレルギー対応などに前向きかつ丁寧な姿勢がある | ✅ / ❌ |
| 礼拝やトイレなどの文化的対応に柔軟である | ✅ / ❌ |