「ムスリム専用」「ヴィーガン専用」はNG?

近年、ムスリムやヴィーガンの方々など、食の制限や価値観を持つ人々に配慮したメニューを導入する飲食店や施設が増えています。しかし、広報の仕方を誤ると、せっかくの多様性対応が誤解され、本来伝えたかった意図とは異なる印象を与えてしまうことも少なくありません。

ここでは、広報担当者が気をつけるべきポイントと、取材時のチェックリストをご紹介します。

「専用メニュー」という言い方が招く誤解

広報活動において、よく見られるのが「ムスリム専用メニュー」「ヴィーガン専用メニュー」といった表現。しかし、これは大きな落とし穴です。

このような表現をしてしまうと、

  • 「ムスリムでない人が食べてはいけない」

  • 「ヴィーガンでない人が注文するべきでない」

といった誤った印象を与えかねません。結果として、提供しているメニューの販売対象が本来よりも狭く見えてしまい、売れ行きにも影響を与える可能性があります。広報では、「多くの方にに食べて頂けるメニュー」「ムスリムやヴィーガンの方にも安心してお召し上がりいただけます」といった形で、「制限」ではなく「選択肢の広がり」として伝えることが大切です。

メディア対応の落とし穴

さらに注意すべきなのが、取材時の情報の伝わり方です。テレビや新聞などのメディア側は、食の多様性に対する知識を基本的には持っていないため、取材した内容が「ヴィーガンのお客様に向けた特別メニュー」と伝えられてしまうことがあります。

そのため、事前に取材内容と表現を細かくチェックし、必要であれば修正依頼をすることが必須です。「わかってくれているはず」と期待せず、むしろ「基本的には何も知らない」と認識して臨むくらいがちょうどいい対応といえます。

取材対応チェックリスト(広報用)

以下のチェックリストを活用することで、誤解のない情報発信につなげましょう。

取材前

  • 担当記者に「ハラール」「ヴィーガン」などの基本的な説明資料を事前に送付

  • 「専用」「限定」などの誤解を招く言葉は使わないよう依頼

  • メニューの意図(例:「より多くの方に食べていただけるよう配慮した」)を明確に伝える

取材中

  • 「多くの方に食べて頂ける」という表現を強調

  • メニューの背後にある背景や配慮を丁寧に説明

  • 「特定の人だけのため」ではなく「多様な人に対応している」ことを繰り返す

取材後・掲載前

  • 掲載前の原稿チェックが可能か必ず確認

  • 見出しやリード文に「専用」などの言葉が使われていないか確認

  • 不適切な表現があれば、早めに訂正依頼を提出


最後に:伝え方次第で、価値が変わる

ハラールやヴィーガン対応メニューは、誰かの制限を補う「特別なもの」ではなく、多くの方々が安心して食べることができる「選択肢の一つ」として伝えることが理想です。広報の役割は、「情報を広める」だけではなく、「誤解を防ぐ」ことにもあります。だからこそ、正しい伝え方、伝えるタイミング、チェック体制の3つが、これからの広報には求められます。