「まず小さな成功を作る」――旭川がムスリム旅行者に選ばれるまで
2026年6月12日(金)、フードダイバーシティ株式会社が主催するランチタイムウェビナー「成功のロジックを公開。なぜムスリム旅行者が集まるのか」が開催された。
ゲストは、HFD株式会社代表で、北海道フードダイバーシティ協議会会長も務める桜井恵氏。「なぜ旭川にムスリム旅行者が集まるのか」をテーマに、フードダイバーシティ代表の横山との対話形式で進められた。
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横山が冒頭「中心になる人がいて、その人がどういう思いで地方を盛り上げてきたのかをお話しいただきたい」と切り出すと、桜井氏は自らの原点を語り始めた。
2016~17年、北海道旭川に移住した桜井氏が気づいたのは「食の多様性対応店舗が1店舗もない」という現実と、東南アジアからの観光客の急増だった。「旭川はおいしいものがたくさんある。それを食べてほしい。もったいない、と思った」――そのシンプルな動機が変革の起点となったという。
桜井氏が選んだ戦略は、行政に頼る前に「小さな成功をたくさん作ること」だった。飲食店を一軒ずつ訪ね、調味料を分解し、「アルコールなしの醤油に変えるだけでいい」という具体策を提案した。成功事例が積み重なった頃に行政へアプローチし、旭川市観光課と連携して誕生したのが「雪のモスク」だ。今では地球の反対側から、あるいは新婚旅行でこれをめがけて訪れる旅行者も少なくない人気のコンテンツになっている。

参加者からは「ムスリム対応で売上はどう変わったか」という質問も上がり、桜井氏は「売上が上がったという声が多い。閑散期に外国人のお客様が来てくれることで、今まで全然ダメだった月が通常になった、という話を聞くと嬉しくなる」と述べた。
またリピーター獲得のカギについては「特別扱いではなく、当たり前のウェルカムな空気感を作ること。SNSで続けてコミュニケーションを取っていたら、3年連続で海外から来てくれた方もいた」と語った。
「自分ができること、できないことを明確に分けて、一人のお客様として精神的に視線移動する。そうすれば、そんなにハードルは高くない」――桜井氏のこの言葉に、ムスリム対応を「難しいこと」から「当たり前のこと」へと変える本質が凝縮されていた。