食品問屋の未来を考え、どのように動くべきか
多様な食文化への対応が求められる中で、ヴィーガン、ハラール、アレルギー対応などに積極的に取り組む店舗や施設が増えています。しかし、飲食店や宿泊施設の現場では「対応したくても食品問屋から商品が手に入らない」という声も根強く、その背景には仕入れに関する課題、特に食品問屋とのやりとりにおけるギャップが浮かび上がってきます。
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なぜ食品問屋がボトルネックになるのか?
フードダイバーシティ対応に関心を持つお店が問屋とのやりとりで壁に直面するのは、次のような状況です。
- 「売れるかわからない商品は仕入れない」という姿勢:多くの問屋は、販売実績のない新商品や専門的な商品について、慎重なスタンスを取ります。「この商品を取りたい」と伝えても、「ケース単位でないと難しい」といった返答があるのが現実です。
- 予想外の見積もり:上記のような商品については、飲食店側に使用をあきらめさせるかのような高額な見積もりが提示されることも。結果的に「対応したくてもできない」状態を招いてしまいます。
- 認識の違い:多くの食品問屋は「ハラール=ハラール認証品」、もしくは「ヴィーガン=ヴィーガン認証品」という認識しか持っていません。もちろん、認証がなくても使用できるものはたくさんありますが、それらの知識がなく、上記の商品しか紹介できない場合が多くあります。「認証品」は認証機関に高いお金を払っているので、基本的には高いものも多く、上記のように「ケース単位」と言われることも多いです。
- 知識のギャップ:ハラールやヴィーガンといった食文化への理解が、問屋側ではゼロベースという前提で接する必要があります。たとえば、ハラール鶏肉の納品をお願いしても「取り扱いは難しい」と言われることがあります。しかし、実際には問屋が扱っているブラジル産の鶏肉が既にハラール認証済みであることも多いのですが、それらの情報を問屋が知らないこともしばしばです。
- 責任問題への慎重姿勢:「何かあったら責任が取れないので」というフレーズが繰り返されることも多く、積極的な対応が難しい問屋も少なくありません。
では、どうすれば前に進めるのか?
このような課題に直面したときに大切なのは、「問屋がすべて対応してくれる」という前提を見直し、飲食店側がリードしていく姿勢を持つことです。
- 具体的な商品名を提示する:「ヴィーガン、ハラール対応の商品が欲しい」ではなく、「●●という醤油が欲しい」と、ピンポイントで商品を指定するほうがスムーズに話が進みます。
- まずは自分で調べる:Amazonなどのプラットフォームでは、商品が原材料情報も含めて検索が可能です。問屋に聞く前に検索してみると、多くの情報が得られますし、そのままAmazonで買った方が安いケースも実際にあります。
- 知識はお店が主導で持つ:問屋に「教えてもらう」のではなく、「この条件の商品が欲しい」と伝える側になる意識が重要です。情報をリードする姿勢が第一歩となります。
- フードダイバーシティ株式会社に支援依頼する:食材・調味料の見分け方や、問屋との交渉方法について、知識が定着するまで伴走支援いたします。
問屋とどう付き合うかが成功のカギ
もちろん、すべての問屋が非協力的というわけではなく、近年ではフードダイバーシティへの理解を深め、積極的に新商品を取り扱おうとする問屋も少しずつ増えています。ただし、全体としてはまだまだ理解が進んでいません。期待値を適正に持ちつつ、現場主導で選択肢を広げていく努力が必要です。
「問屋が動かないからできない」と諦めるのではなく、「だからこそ自分たちで工夫する」──。それが、フードダイバーシティを実現するための現実的な一歩なのです。