多様化する観光客の食事対応で、社内がもめる理由

「ヴィーガンのお客様がいるそうです。対応できますか?」

団体旅行やMICEの相談を受けたセールス・予約担当が、料理現場に確認する。食の多様性対応では、ここから社内のすれ違いが始まることがあります。お客様の要望に応えるには、料理を作る人と、予約を受ける人の連携が欠かせません。

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料理人の立場:「それだけでは、何を作ればいいか分からない」

料理人にとって、「ヴィーガンがいる」「ムスリムがいる」という情報だけでは、献立を決められません。

何を避ける必要があるのか。魚の出汁や調味料はどうか。対象は何人で、いつ提供するのか。ほかの料理と同時に出せるのか。必要な情報がそろわなければ、仕入れも調理方法も判断できません。

料理人が「すぐには答えられない」と言うのは、対応したくないからとは限りません。一度「できます」と約束した以上、当日に提供する責任があるからです。

セールス・予約担当の立場:「返事を待たせたら、案件が流れるかもしれない」

一方、セールス・予約担当は、お客様から直接回答を求められる立場です。

「ほかの施設では対応できると言われました」と聞けば、何とかして要望を受けたいと思うでしょう。問い合わせの段階では人数や条件が確定していないこともあり、料理現場が求める情報をすべて聞き出すのは簡単ではありません。

セールス・予約担当にも、予約を逃さず、お客様の期待に応えたいという思いがあります。

対応ポリシーが決まっていれば、毎回ゼロから議論しなくて済む

こうした衝突を減らすうえで重要なのが、施設としての「食の多様性対応ポリシー」です。

たとえば、ヴィーガン料理はどの範囲まで対応するのか。ハラール認証を受けた食材を使うのか。調理器具の共用について、どこまで対応できるのか。何日前までの予約なら受けられるのか。誰が最終的な提供可否を判断するのか。

これらが決まっていれば、セールス・予約担当はお客様に確認すべきことが分かります。料理人も、施設として決めた範囲を基に、料理と提供方法を考えられます。

「何でもできます」でも「うちは無理です」でもなく、「当施設では、ここまで対応できます」と説明できる状態をつくる。それがポリシーの役割です。個々の要望まで一枚の文書で解決できるわけではありませんが、判断のたびに社内で一からもめる状況は減らせます。

ポリシー事例

お客様への約束を、料理現場が実行できる形にする

問い合わせの時点で詳細が分からなければ、セールス・予約担当は次のように伝えられます。

当施設の対応方針に沿って、ご要望を伺ったうえで、提供できる内容を料理担当と確認してご案内します。

その後、食べられないもの、人数、日時、予算、調理上の希望を確認する。料理人は、その条件と施設のポリシーを照らし合わせ、提供できる内容と追加確認が必要な点を返す。

食の多様性対応を料理人の頑張りだけに任せず、セールス・予約担当の判断だけにも任せない。施設の対応ポリシーを先に決め、それを共通の判断基準にすること。それが、社内のすれ違いを減らし、お客様への約束を守るための土台になります。