「サステナブルだから売れる」は限界
アメリカのフードテック市場において大きな期待を集めてきた「プラントベース(代替肉)」は、ここ数年でその評価に変化が生じつつあります。
かつてはサステナビリティや健康志向を背景に急速な成長が期待されていましたが、現在では市場の伸びに陰りが見られ、一部では成長の鈍化や需要の変化が指摘されています。こうした動きは、単なる一時的なトレンドの変化にとどまらず、消費者の選択基準や市場構造そのものの見直しを示唆するものとして注目されています。

市場は拡大から調整局面へ
複数の調査データおよび報道から、以下の傾向が確認されています。
- 市場シェア:約1%前後(米国小売ベース)
- 売上:前年比で減少(10〜20%程度の下落が報告)
参考データ
- Good Food Institute(プラントベース市場データ)
https://gfi.org/marketresearch/ - NielsenIQ(米国小売データ分析)
https://nielseniq.com/global/en/insights/analysis/2023/state-of-plant-based-foods/ - The Guardian(売上減少の報道)
https://www.theguardian.com/food/2025/sep/12/vegan-burgers-meat-vegetarian
※数値は調査会社や定義により差異があるため、複数データの共通傾向として整理
ただし、ベジタリアンやヴィーガンの減少ではない
代替肉市場の減速は、ベジタリアンやヴィーガンといった食習慣を持つ人々の減少を直接的に示すものではありません。
実際、米国を中心とした調査では、フレキシタリアン(肉の消費を減らす層)を含め、植物由来食品への関心自体は依然として一定規模で存在しています。一方で、消費者の選択基準はよりシビアになっており、「サステナブル」「代替」という概念だけでは購買に結びつきにくくなっていることが指摘されています。
つまり、市場の減速は“需要の消失”ではなく、“評価軸の変化”と捉えるべきです。味・価格・加工度といった実用的な要素が、従来以上に重視されるようになっています。
失速の背景として
味
- 多くの商品が「肉に近い」再現を目指しているが、消費者が納得する味ではない
価格
- 一般的に従来の食肉より高価格帯
- 価格差に関する分析
https://nielseniq.com/global/en/insights/analysis/2023/state-of-plant-based-foods/
超加工食品への指摘
- 米国では「Ultra-processed food(超加工食品)」への関心が高まっている
- Harvard Health(超加工食品に関する解説)
https://www.health.harvard.edu/staying-healthy/ultra-processed-foods
新たな動き:ハイブリッド型
完全な植物由来ではなく、植物と動物性を組み合わせた製品も登場しています。
- Washington Post(ハイブリッド肉に関する報道)
https://www.washingtonpost.com/climate-environment/2025/05/20/plant-based-meat-has-problem-it-may-need-more-meat/
日本でも代替肉市場は縮小するも、大豆製品は安定
日本においても多くの企業が大豆ミート市場を中心とする代替肉事業に参入しましたが、現在では市場の成長が鈍化し、縮小や撤退の動きが見られます。
一方で、代替肉とは対照的に、日本には古くから大豆を原料とした食品が存在し、現在も日常的に消費されています。
総務省の家計調査においても、豆腐をはじめとする大豆食品は継続的に購入されており、基礎的な食品として定着していることが確認できます。これらの食品は特定のトレンドに左右されることなく、家庭の食卓や外食の中で継続的に消費されており、安定した市場を形成しています。
新市場ではなく「既存価値の再認識」
こうした構造を踏まえると、日本における代替肉の広がりは、米国のような新たな市場の創出というよりも、既存の大豆食品の価値が改めて認識された動きとして捉えることができます。もともと日本には、大豆を主原料とした多様な食品が存在しており、それらは肉の代替ではなく、独立した食文化として発展してきました。
そのため、代替肉という概念は、日本においては豆腐や油揚げといった既存の大豆食品で十分に代替可能であることが再認識された側面があると考えられます。