―― 断食だけではない、その本当の意味

「ラマダンといえば、1か月間の断食」と認識されている方も多いかもしれません。確かに断食はラマダンの中心的な行為ですが、それだけではありません。ラマダンは、世界のムスリムにとって心や生活を整える大切な期間でもあります。

本記事では、日本ではあまり知られていないラマダンの特徴を、解説します。

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ラマダンとは何か?

ラマダン(Ramadan)は、イスラム暦第9月にあたる神聖な月です。この期間、ムスリムは日の出から日没まで断食(サウム)を行います。ラマダンは、イスラム教の五行(五つの基本義務)の一つに位置づけられています。

① 断食は「苦行」ではない

日本では「しんどいこと」「嫌なこと」「何かの罰」というイメージを持たれがちですが、ラマダンの断食は自己鍛錬と精神浄化が目的です。

  • 忍耐を学ぶ

  • 欲望をコントロールする

  • 貧困層への共感を深める

つまり、身体よりも心のトレーニングに近い行為です。

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② 水も飲まないのは本当?

本当です。日の出から日没まで、

  • 食事

  • 水分

を基本的に控えます。

ただし、子ども・妊婦・高齢者・病人などは免除されます。日本人が想像するよりも、柔軟で現実的な制度です。

③ 夜は“お祭り”のようになる

断食は日没で終わります。日没後の食事は「イフタール」と呼ばれ、家族や友人と共に食卓を囲みます。

イスラム諸国では街全体が夜に活気づきます。夜市が立ち並び、レストランは満席。ラマダンは“静かな月”であると同時に、“活気ある月”でもあります。

④ 経済が大きく動く月でもある

日本では意外と知られていませんが、ラマダンは消費が増える時期でもあります。

理由は:

  • 家族が集まる機会が増える

  • 特別な料理や贈答が増える

  • 断食明けの祭り「イード」に向けた購買

中東や東南アジアでは、ラマダン前後は年間最大級の商戦期になります。

⑤ 仕事は止まらない

「断食中は働かないのでは?」と思う人もいますが、多くの国では通常通り仕事をします。

ただし、

  • 勤務時間短縮

  • 生産性配慮

  • 会議時間の調整

などの工夫が行われる場合があります。グローバルビジネスでは、ラマダンを理解したスケジュール設計が重要です。

⑥ ラマダンは“連帯”の月

この期間、ムスリムは寄付(ザカートやサダカ)を強く意識します。富裕層が貧困層を支える構造が強まります。ラマダンは単なる個人行為ではなく、共同体を強める月でもあるのです。

⑦ ラマダン=毎年同じ時期ではない

イスラム暦は太陰暦のため、ラマダンの時期は毎年約10日ずつ前倒しになります。

そのため、

  • 夏は日の出が早く、日の入り遅いため、長時間の断食となる

  • 冬は日の出が遅く、日の入りが早いため、短時間の断食となる

日本企業がムスリム市場と取引する場合、この点の理解は不可欠です。

⑧ 日本でのラマダン

日本在住ムスリムも増加しており、東京や大阪ではイフタールを提供するレストランも増えています。たとえば、東京都 ではモスク周辺が賑わうこともあります。日本社会にとっても、ラマダンは“遠い文化”ではなくなりつつあります。

まとめ

日本人に馴染みの薄いラマダンの本質は、

  • 精神の浄化

  • 家族や友人の絆

  • 社会的連帯

といった多層的な意味を持つことです。それは単なる宗教行事ではなく、世界経済や国際ビジネスにも影響を与える期間です。