料理人がセミナーに求めているものとは?

フードダイバーシティ株式会社では日本全国で多様な食文化に対応するためのセミナーを行なっていますが、その中で主催者から「レシピの提供はありますか?」という質問をいただくことがあります。

しかしながらフードダイバーシティ株式会社ではレシピの配布は行っていません。その理由は決して情報を隠したいわけではなく、料理現場の本質的なニーズを踏まえたものです。

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そもそもフードダイバーシティ対応で作り方が根本的に変わるわけではない

フードダイバーシティに対応した料理を作る際、根本的な調理の流れや作り方は変わりません。

例えば、通常の天ぷらとヴィーガン天ぷらを比べてみても、食材や調味料の一部が異なるだけであり、揚げる工程や衣の付け方などの調理手順は全く同じです。

セミナー参加者は料理教室に通う方と属性が全く異なる

セミナー参加者の多くは、日々現場で料理を行う方であり、ABCクッキングスタジオのような一般向けの料理教室に通う方とは異なります。確かに一般の料理教室であれば、レシピを配布し、調理工程を細かく解説し、同じように調理ができるよう伴走する必要があるでしょう。

しかしながら、日々現場で料理を行う方々は料理の基礎(基本的なレシピや調理工程)がしっかり身についています。基礎がある上でお店としての個性や、地域の特性を出すために日々取り組んでいるため、一般向け料理教室の内容は必要がないのです。

例えるなら、それはプロ野球選手が初心者向け野球教室に参加することと同じです。

料理人がセミナーに求めているもの

セミナーに参加する料理人たちは、レシピを知りたいわけではありません。彼らが本当に求めているのは、現場で役立つ実践的な知識やノウハウです。

具体的には以下のようなポイントが挙げられます。

1. フードダイバーシティに関する基礎的な知識

ヴィーガン、ハラール、グルテンフリーなど、多様な食文化に関する基礎的な知識。これらは、従来の料理学校のカリキュラムには組み込まれておらず、ネット上の情報も玉石混交で、誤った情報や偏った解釈が散見されるため、最新情報や正確な知識を得るためにセミナーに参加します。

2. 食材・調味料の選び方、仕入れ先について

フードダイバーシティ対応において、料理人が最も知りたいポイントのひとつが「食材・調味料の選び方」と「仕入れ先の確保」です。セミナーでは、ただ理論だけを教えるのではなく、食材・調味料の選び方、さらには調達のコツまで実務に直結する情報を提供しています。

3. 基礎を理解した上で、異なる部分にどう向き合うべきか

基本的な調理技術や料理の流れは変わらないものの、特定の食材や調味料、調理手順の微調整など、対応すべき「異なる部分」が存在します。セミナーでは、その「異なる部分」に対してどのようにアプローチをすべきかについて、「考え方」を提供しています。

4. 現場オペレーションへの落とし込み方

フードダイバーシティ対応を実際の厨房でどう運用するかが重要です。限られた時間やスタッフの人数、調理設備のなかで、効率的かつ安全にメニューを提供するための工夫やヒントをセミナーで提供しています。

5. 先駆者や他社事例

同じ業界や似た規模の店舗がどのようにフードダイバーシティ対応を進めているのか、成功事例や失敗事例の共有は大きな学びになります。セミナーでは実例から得られる具体的なノウハウやヒントを提供しています。

6. お客様のニーズや、味のあたり

「多様な食文化対応の先に、お客様はどういった料理が食べたいのか」と「味のあたり」を多くの料理人は求めています。ただ単に食材・調味料を置き換えるだけではなく、お客様の期待に応えられる”料理”や“美味しさ”を追求することが不可欠です。

事業者から「レシピがほしい」と言われたら

もし事業者から「レシピがほしい」と言われたとき、それは以下のサインです。

  • 考えたくない、学びたくない

  • 失敗したときにレシピのせいにしたい

この姿勢で対応したとしても、お客様にそれはすぐに伝わってしまうので、地域にとってマイナスの事例になってしまう可能性が高いです。Google検索するだけで基本的なレシピはすぐに学ぶことができるので「レシピがないとできない」という声に耳を傾ける必要性はありません。

まとめ

フードダイバーシティ株式会社のセミナーでは、単なるレシピの提供は行っていません。なぜなら、料理人が本当に求めているのは「正しい知識」「現場に応じた考え方」「実務に活かせるノウハウ」であり、フードダイバーシティに対応してもレシピそのものが根本的に変わるわけではないからです。

そのため、フードダイバーシティのセミナーは、実践的な知識や具体的なオペレーション、他社事例などを通じて、料理人が自らのスキルと店舗の強みを活かしながら多様なニーズに応えていける内容を提供しています。