脱属人化の重要性

「ヴィーガンのお客様が来たら、料理長が対応します」

このような運用をしている飲食店や宿泊施設は、一度立ち止まって考えてみてください。料理長が休みの日や、別の業務で手が離せないときにも、同じ対応ができるでしょうか。

料理長が対応方法を理解し、料理を作れることは大切です。しかし、それだけで店舗としての受け入れ体制が整ったとは言えないと当社は考えます。今回は、特定の担当者に依存せず、ヴィーガン対応を継続するための方法を提案します。

「その人なら作れる」から「店舗として提供できる」へ

例えば、料理長がその場で食材を選び、料理を作る場合を考えてみましょう。使用した調味料や調理手順が記録されていなければ、別のスタッフは何を使い、どう作ればよいのかを判断できません。

お客様への案内も同様です。厨房では対応できるのに、予約担当や接客スタッフが提供可能なメニューを把握していなければ、問い合わせに回答できません。目指したいのは、確認済みのメニューを、共有した手順に沿って提供し、判断に迷ったときの確認先も決まっている状態です。

レシピには、調味料の商品名まで記載する

観光庁の「ベジタリアン・ヴィーガン/ムスリム旅行者おもてなしガイド」は、肉や魚だけでなく、出汁や調味料、加工食品の原材料も確認する必要があると説明しています。ヴィーガンについては、卵・乳製品・蜂蜜・ゼラチンなども食べないものとして挙げています。

そのため、レシピに「野菜」「出汁」「ソース」と書くだけでは、使用条件を十分に共有できません。当社は、次の情報を一緒に記録することをおすすめします。

  • 使用する食材・調味料の商品名とメーカー
  • 分量、仕込み方、調理手順
  • 付け合わせや仕上げを含めた盛り付け写真
  • 調理器具や揚げ油を共用するかなど、店舗の対応条件
  • 食材が欠品した場合の対応と、判断に迷ったときの確認先

例えば、主菜だけでなく、仕上げのバターや付け合わせのドレッシングまでレシピに含めます。担当者が替わっても、確認した条件を維持できる形にすることが重要です。

購買担当にも「変更前の確認」を共有する

レシピを整えても、仕入れる商品が変更されたときの確認が抜けていては、対応条件を維持できません。

例えば、確認済みのソースが欠品し、別の商品に切り替える場面です。新しい商品を使う前に原材料を確認し、必要に応じてメーカーへ問い合わせる手順を決めておきましょう。

その際、「誰が確認するか」「確認が済むまで何を提供するか」「レシピやメニュー表示を誰が更新するか」まで明確にします。厨房だけで完結させず、購買担当にも共有すべき事項です。

接客スタッフが説明できるところまで整える

観光庁のガイドは、使用食材や専用の調理場・調理器具の有無など、対応内容を明示することの重要性も示しています。

この考え方を接客に落とし込むため、当社は予約担当やホールスタッフが確認できる案内資料の作成を提案します。

資料には、提供できる料理、価格、予約の要否、提供時間、使用食材、調理器具などの共用状況をまとめます。確認できていないことは断言せず、責任者へ照会する手順も必要です。厨房で共有している条件と、お客様に伝える内容を一致させましょう。

通常の営業で提供できるメニューから始める

毎回、料理長が一から献立を考える運用を見直すなら、まずは提供条件を確認したメニューを絞って整える方法があります。

観光庁のガイドも、既存メニューの活用から、対応メニューの常設、メニューの充実へと段階的に進める考え方を示しています。当社は、通常の営業で無理なく作れ、ヴィーガン以外のお客様にも楽しんでいただける料理を選ぶことをおすすめします。そのうえで、複数のスタッフが調理し、同じ条件・品質で提供できるかを確認します。

料理長が休みの日にも提供できるか。これは、ヴィーガン対応を店舗の仕組みとして定着させるための確認項目です。

料理長の知識や技術を、レシピ、仕入れ、接客へとつなげる。メニュー開発や研修の成果を継続するために、そこまで含めた受け入れ体制を整えていきましょう。


参考資料:観光庁「ベジタリアン・ヴィーガン/ムスリム旅行者おもてなしガイド」(2024年4月、P6・13~16)
※具体的な記録項目や運用手順は、同ガイドを踏まえた当社の提案です。