日本企業が注意すべきポイント
世界最大級のムスリム人口を抱えるインドネシアで、ハラール製品保証制度が新たな段階を迎えます。
インドネシアのハラール製品保証実施庁(BPJPH)は、2026年10月18日から、食品・飲料をはじめとする幅広い品目について、ハラール認証義務の対象を拡大する方針を示しています。
今回の対象には、インドネシア国内の零細・小規模事業者が製造する商品だけでなく、海外から輸入される商品も含まれます。インドネシア向けに食品を輸出している、または今後の輸出を検討している日本企業にとっても、対応を急ぐ必要がある重要な制度変更です。

2026年10月18日から対象が拡大
インドネシアでは、2014年に制定された「ハラール製品保証法」に基づき、商品カテゴリーや事業者の規模ごとに、段階的にハラール認証制度を導入してきました。
中規模・大規模事業者の食品・飲料などについては、すでに2024年10月から制度の適用が始まっています。
次の段階となる2026年10月18日からは、主に以下のカテゴリーへ対象が広がる予定です。
- 食品・飲料
- 食肉処理製品および食肉処理サービス
- 食品・飲料に使用する原材料
- 食品添加物
- 加工助剤
- 化粧品
- 伝統薬、医薬部外品に相当する製品、健康補助食品
- 化学製品、遺伝子組換え製品
- 衣類、家庭用品、文房具、一定区分の医療機器など
BPJPHは、2026年6月にインドネシア国会との会議において、「2026年10月の実施を延期しない」との方針を示しています。
出典:インドネシア・ハラール製品保証実施庁(BPJPH)
https://bpjph.halal.go.id/read/raker-dengan-dpr-kepala-bpjph-pastikan-implementasi-wajib-halal-oktober-2026-sesuai-tahapan
日本から輸出する食品も対象に
海外で製造され、インドネシア国内へ輸入される食品・飲料については、ハラール認証義務の適用が2026年10月17日まで猶予されています。
現行方針どおりに制度が実施されれば、2026年10月18日以降、日本からインドネシアへ輸出される食品についても、新しい制度を踏まえた対応が必要になります。
インドネシア政府は2026年6月、輸入品に関係する制度の実施に向け、省庁間の調整を進めていることを公表しました。特に、海外のハラール認証機関との相互承認、海外で発行された証明書の登録、輸入品の監督体制などが重要な論点となっています。
さらに2026年8月には、インドネシアへ入る海外のハラール製品の適合性を確保するための「BPJPH規則2026年第4号」が制定されました。同規則は8月7日に決定され、8月10日に公布されています。
出典:インドネシア・ハラール製品保証実施庁(BPJPH)
https://bpjph.halal.go.id/read/bpjph-dan-k-l-terkait-rakor-perkuat-kebijakan-produk-impor-jelang-implementasi-wajib-halal-oktober-2026
出典:BPJPH法令情報データベース
https://jdih.halal.go.id/jdih/dokumen/3458fb8c-5f45-42a5-9fdf-72c0e65a3ba3
BPJPHと相互承認している日本の認証団体は5団体
日本企業が注意しなければならないのは、「日本国内でハラール認証を取得すれば、どの認証でもインドネシアへ輸出できる」というわけではない点です。
2026年9月2日時点で、BPJPHの公式な外国ハラール認証機関(LHLN)一覧には、日本から次の5団体が掲載されています。
| 認証団体 | 略称 | BPJPHが認める認証範囲 | 有効期限 |
|---|---|---|---|
| 宗教法人 日本ムスリム協会 | JMA | 食品、化学製品 | 2028年6月30日 |
| Japan Islamic Trust | JIT | 食品、飲料、化粧品 | 2028年2月20日 |
| Muslim Professional Japan Association | MPJA | 食品、飲料、医薬品、化粧品、使用製品 | 2028年10月26日 |
| Nippon Asia Halal Association | NAHA | 食品、飲料、医薬品、化粧品、化学製品 | 2029年2月24日 |
| NPO法人 日本ハラール協会 | JHA | 食品、飲料、化粧品、化学製品、と畜サービス | 2028年8月26日 |
重要なのは、5団体すべてが同じカテゴリーを認証できるわけではないことです。
例えば、JMAについてBPJPHが認めている範囲には「食品」と「化学製品」が掲載されていますが、「飲料」は掲載されていません。一方、JITには「食品」「飲料」「化粧品」が掲載されていますが、「化学製品」や「と畜サービス」は含まれていません。
したがって、日本企業は単に「BPJPHと相互承認している認証団体か」を確認するだけでなく、自社商品がその団体の認証範囲に含まれているかまで確認する必要があります。
出典:インドネシア・ハラール製品保証実施庁(BPJPH)「外国ハラール認証機関一覧」
https://bpjph.halal.go.id/cari/lembaga-halal-luar-negeri?page=5
日本の認証を取得しただけでは手続きは完了しない
BPJPHの一覧に掲載された日本の認証団体からハラール認証を取得しても、それだけでインドネシアにおける手続きが完了するわけではありません。
農林水産省が公表している資料によると、BPJPHから相互承認を受けた外国の認証機関を利用する場合、認証取得後に、インドネシアの輸入者または現地の正式な代理人を通じて、海外ハラール証明書をBPJPHのシステム「SiHalal」へ登録する必要があります。
同資料では、登録時に提出する書類として、主に以下が示されています。
- 海外ハラール証明書の登録申請書
- 登録手続きを委任する委任状
- インドネシア国内の輸入者または代理人の事業許可番号(NIB)
- ハラール証明書の写し
- 認証団体とBPJPHとの相互承認協定に関する書類
- HSコードを記載した輸入予定製品の一覧
- 提出書類の正確性を保証する誓約書
実際の必要書類や手続きは、商品カテゴリーや輸入形態によって異なる可能性があります。
日本企業は、認証を申請する前に、利用予定の認証団体とインドネシア側の輸入者へ、次の事項を確認することが重要です。
- 自社商品が認証団体のBPJPH認定範囲に含まれているか
- 発行される証明書がインドネシア向けとして有効か
- SiHalalへの登録を誰が担当するのか
- 商品ごとのHSコードが認証・登録内容と一致しているか
- インドネシアで使用するハラール表示の形式
- 登録完了までに必要な期間と費用
インドネシア向け輸出では、「日本でハラール認証を取得すること」と「その証明書をインドネシアで有効なものとして登録すること」を、別の手続きとして考える必要があります。
参考:農林水産省「ハラール認証申請手続き(日本からの申請)」
https://www.maff.go.jp/j/yusyutu_kokusai/kokuchi/middle_east/attach/pdf/index-27.pdf
非ハラール商品が全面的に輸入禁止になるわけではない
今回の制度について、「2026年10月から、ハラール認証のない食品はすべてインドネシアへ輸出できなくなる」と理解するのは正確ではありません。
BPJPHは2026年3月、世界貿易機関(WTO)のTBT委員会において、ハラール基準上認められない原材料を含む商品であっても、規定に従って非ハラールであることを明確に表示すれば、インドネシアへの輸入、流通、販売は可能であると説明しています。
つまり、制度上は、
- ハラール商品として販売する商品
- 非ハラールであることを明示して販売する商品
を区分して管理する考え方になっています。
ただし、具体的な表示方法、商品カテゴリーごとの適用条件、輸入時に求められる書類などは個別に確認する必要があります。「ハラール認証を取得しない場合は、何もしなくてよい」ということではありません。
出典:インドネシア・ハラール製品保証実施庁(BPJPH)
https://bpjph.halal.go.id/read/di-forum-stc-wto-indonesia-tegaskan-komitmen-implementasi-wajib-halal-oktober-2026
原材料だけでなく物流管理にも注意
インドネシアのハラール制度では、最終商品の原材料だけが確認対象になるわけではありません。
BPJPHは、包装、保管、輸送、流通などの物流工程についても、ハラール商品の完全性を維持し、非ハラール物質との交差接触を防止するための管理が必要だと説明しています。
日本企業がインドネシア向け商品を製造する際には、次のような工程も確認する必要があります。
- 製造設備や器具の共用状況
- 洗浄方法
- 原材料や商品の保管区分
- 包装工程
- 倉庫での管理
- 輸送時の取り扱い
- インドネシア国内での流通経路
商品そのものがハラールであっても、製造から販売までの管理内容を説明できなければ、手続きが滞る可能性があります。
日本企業は「認証を取るか」だけで判断しないこと
インドネシア市場への対応では、単純にハラール認証を取得するかどうかだけでなく、現地で商品をどのように販売するのかを先に決める必要があります。
主な判断事項は以下のとおりです。
- ハラール商品として広く販売するのか
- 非ハラール表示を行ったうえで販売するのか
- どの認証団体を利用するのか
- その団体が自社商品のカテゴリーについてBPJPHから認められているか
- 現地輸入者と日本側企業のどちらが、どの手続きを担当するのか
- 原材料・製造・物流を制度に合わせて変更できるのか
インドネシアは、日本の食品企業にとって大きな可能性を持つ市場です。一方、人口の多さや市場規模だけを見て参入し、認証・登録・表示・物流の確認を後回しにすると、輸出直前に問題が判明するおそれがあります。
2026年10月18日まで残された時間は長くありません。
インドネシア向けに輸出している企業は、現地輸入者、利用しているハラール認証団体、通関や制度に詳しい専門家へ早急に確認し、自社商品に必要な対応を整理することが求められます。
なお、制度の詳細や運用は今後更新される可能性があります。実際に輸出する際は、BPJPH、インドネシアの関係当局、農林水産省、JETROなどが公表する最新情報を必ず確認してください。
参考:農林水産省「ハラール及びコーシャに関する情報」
https://www.maff.go.jp/j/yusyutu_kokusai/kokuchi/halal.kosher/index.html
参考:JETRO「日本からの輸出に関する制度・インドネシア」
https://www.jetro.go.jp/world/asia/idn/foods/exportguide/pastry.html