伝統食もムスリム・菜食主義に対応 新潟・越後湯沢で
インバウンド(訪日外国人)が増える越後湯沢で、多様な食のニーズに対応するための取り組みが始まる。ベンチャー企業と農業法人が連携してカフェを開業し、ベジタリアン(菜食主義者)やムスリムの旅行者に対応した料理を提供する。雪国の郷土料理や県の名物もアレンジする。調理した総菜は、希望する近隣の宿泊施設にも提供するなど、地域で取り組む。

湯沢町でムスリム旅行者にも対応したホステルを運営するSnow Safariが、ホステルの1階を改装し2月中旬にカフェ「moff」を開業する。南魚沼市の農業法人と連携し、ベジタリアンやムスリム旅行者でも安心して食べられるピタパンや弁当などを販売する。
ピタパンは中東などで一般的に食べられている平らなパンで、中に総菜を挟む。総菜の中身は現在開発中だが、魚沼地方の郷土料理「きりざい」や神楽南蛮、栃尾の油揚げなど、地元の伝統食や発酵食品をアレンジする計画だ。イスラム教徒の戒律に従ったことを証明する「ハラル認証」も取得する。
総菜は越後湯沢駅近くのキッチンスペースを借りて調理する。ベジタリアンやムスリム旅行者の食文化に単独で対応できていないホテルや旅館に、作った総菜を提供するサービスも2月から始める。
Snow Safariの奥田将大最高経営責任者(CEO)は、中東地域で石油の開発事業などを手掛けていた経験を持つ。イスラム圏の食や生活文化に関する知識を生かし、2019年に越後湯沢にホステルを開業した。19年の1~3月のスノーシーズンには400人が宿泊し、そのうちムスリムやベジタリアンが270人だった。

観光客の多い越後湯沢ではインバウンドの受け入れ体制が整っているが、奥田さんは「ムスリムやベジタリアンへの対応はまだ進んでいない」と指摘する。対応できる宿泊施設がないために、首都圏に日帰りで帰ってしまう外国人もいるという。
魚沼や湯沢の伝統食をベジタリアンやムスリム向けにアレンジすることで、旅行者の食文化に対応しながら、新潟の食文化も伝えていく。湯沢はスキー目当てで冬に訪れる観光客が多く、今年度のような少雪だと大きな痛手となる。「雪だけの観光地ではなく、食の魅力で世界から観光客を呼び込みたい」(奥田さん)
日本ではマレーシアやインドネシアなど、ムスリムの多い東南アジアからの訪日客が急増している。県も東南アジア市場の概況やハラル食品について紹介するセミナーを開催し、観光に携わる事業者の取り組みを促進している。