サボテンが革素材に「ヴィーガンレザー」が開発される(メキシコ)


 動物の皮を使った本革は、バッグや靴、財布などに幅広く使用されているが、皮をなめす工程において大量の化学物質が使用されることでの環境汚染や、乱獲による種の減少などの問題がある。

 そのため、近年ではナイロンやポリエステル、ポリウレタンなどの合成樹脂層をコーティングして作る合皮(フェイクレザー)の需要が増えているものの、やはりこれも環境にはやさしくない。


 そこで今回新たに開発されたのは、サボテンを使った「ヴィーガンレザー」である。この素材なら持続可能な生産の実現が見込めるし、環境に配慮されている。
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Desserto | Cactus Vegan Leather

【サボテンから作るヴィーガンレザーが開発】

 メキシコ在住のエイドリアンさんとマルテさんは、これまでファッション業界や家具、自動車産業に従事してきたが、環境汚染が深刻な問題であることから、自身で環境にやさしい何かを作りたいと思うようになり、スタートアップ企業『Adriano Di Marti』を設立した。

 まる2年の歳月をかけて調査した結果、2人はサボテンに目をつけた。

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 メキシコでは、サボテンが全土で栽培されており、また水を必要としなくても育つ。この2つを利用して、同社は環境にやさしいヴィーガンレザーを開発した。


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【本革によく似たヴィーガンレザーは、オーガニック素材で10年の耐久性】

 エイドリアンさんとマルテさんは、メキシコで食用としてもよく使用されているノパルサボテンをサカテカス州にある農場で栽培。

 成熟した葉を切り、汚れを落としてすり潰し、3日間天日に晒して乾燥させた後、特許取得済みの独自の技術により染色をする。

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 この過程において、動物の皮を用いた場合にはその臭いや菌からの保護のためにホルムアルデヒドなどの有毒物質が含まれている混合なめし剤が使われる。これが、工場から放出される有害化学物によって河川汚染や異臭を引き起こすことで、深刻な環境問題となっているのだ。

 しかし、サボテンから作られる革の場合、そうした有害物質は一切出ない。それでいて、ノパルサボテンの分厚い表皮は、動物の皮に非常に近い質感を持っており、出来上がった製品は本革のような弾力性と耐久性、通気性に優れ、10年近く使用でき、高度なカスタマイズが可能だ。


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【世界的に有名なレザー見本市でも高評価】

 2019年7月、ついにこのヴィーガンレザーが市場に出回るまでの製造を行うことに成功したエイドリアンさんとマルテさん。

 Dessertoと名付けられたヴィーガンレザーの製品は、本革と同程度の価格で多種多様な色や厚さでデザインされ、既に靴やハンドバッグ、カーシートなどの製品を展開させている。

 2019年10月に、イタリアで開催された世界的に有名なレザー見本市『Lineappele』では、素材の柔らかさや手触り、色味などの点で早くも高評価を得たという。

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 現在、2ヘクタールの農場でサボテンを栽培している2人だが、いずれは40ヘクタールまで拡張可能ということで、今は素材を安定させ市場への需要が高まっていくことを期待している。

 本革や合皮と比べても、あらゆる面で環境に最もやさしく、今後も持続可能な生産が十分に見込めるサボテンのヴィーガンレザー。環境汚染と無縁のこの製品を、私たちが普通に手にする日も、そう遠くないかもしれない。


written by Scarlet / edited by parumo

記事全文はこちら:サボテンが革素材に「ヴィーガンレザー」が開発される(メキシコ) http://karapaia.com/archives/52292108.html