イスラム教留学生への対応 料理、礼拝…7国立大に差

 総務省九州管区行政評価局は22日までに、九州の7国立大学におけるイスラム教徒(ムスリム)の留学生への対応をまとめた。イスラム教の戒律に沿う「ハラル」料理を食堂で常時提供しているのは4大学、提供していないのは長崎大など3大学だった。

 「ハラル」とはイスラムの教えで許されているものを意味する。イスラム教の戒律では、豚肉やアルコールなどを含むものを食べることはタブーとされる。

 同局が7国立大学の実態を調査したところ、九州、熊本、大分、鹿児島の4大学では食堂で常時ハラル料理を提供していた。佐賀、長崎、宮崎の3大学では提供していなかった。

 長崎大では三つのキャンパスのうち、坂本キャンパスの売店でカップ麺やクッキーなど数種類のハラル食品を販売している。同大生活協同組合によると、坂本キャンパスに通っていた学生の発案で2015年に取り扱いを始めた。ただ、ハラル料理の需要は低いとみており、食堂で常時提供することは難しいという。

 イスラム教の戒律では1日に5回礼拝することが求められる。調査によると、長崎大以外の6大学では本部キャンパスや隣接する施設に礼拝スペースがあったが、同大では本部(文教)キャンパスではなく、坂本キャンパスに礼拝スペースがあった。

 調査結果を踏まえ、弁護士や大学教授らでつくる行政苦情救済推進会議に同局が諮ったところ、「留学生から要望を把握するなどして環境整備を推進することが望ましい」との回答があったという。なお、ムスリムの対応に関する法令やガイドラインはないため、改善措置は求めない。

 長崎大によると、18年5月時点で留学生は計576人。ムスリムの数は把握していないが、ムスリムが多い国の留学生は▽バングラデシュ7人▽マレーシア6人▽エジプト4人▽イラン3人▽インドネシア2人-などとなっている。

 県内の大学などでつくる長崎留学生支援センターによると、県内の大学・短期大学・高等専門学校に在籍する留学生は計1566人(同月時点)で、増加傾向にある。同センターは「ムスリムを含めた留学生の増加は今後も予想される。ムスリムだけでなく、留学生全体の受け入れ環境を整えていく」としている。

長崎大坂本キャンパスの売店。ハラル食品であることを示すマーク(左下)が貼られた棚にカップ麺が並ぶ=長崎市坂本1丁目

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